「確定申告」は、国税である所得税を自ら計算して、税務署に届け出るための手続きです。「税金を正しく納めるための仕組み」であり、知っておくと便利ですが、いまいちよくわからない、と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A」(桑原清幸・著)では、税金の基礎や収入の区分、帳簿の付け方から節税のコツまで、確定申告にまつわる素朴な疑問について、ケースごとの事例を交えながら、詳しく解説しています。
本記事では「健康保険料」についてのQ&Aを紹介します。
国民健康保険料が高い!何とかなりませんか?
Q.
私はデザイナーです。勤めていたデザイン事務所を3年前に退職して、個人事業主になりました。現在、国民年金と国民健康保険に加入していますが、国民健康保険料が毎年増え続けていて困っています。何とかならないでしょうか?
A.
国民健康保険組合(国保組合)への加入を検討してはいかがでしょうか? クリエイターの方が加入できる国保組合に、「文美国保」(ぶんびこくほ:文芸美術国民健康保険組合)というものがあります。保険料が定額なので、事業所得が多くなってきた方にとっては、保険料がかなり安くなるかもしれません。
個人事業主にとって、税金と同じく悩ましいのが、社会保険ですね。個人事業主が加入する社会保険には、国民年金と国民健康保険があります。国民年金は、所得にかかわらず保険料が定額となっていて、月額1万6340円です(平成30年度)。定額ですので、残念ながら工夫して下げる余地がありません。
一方で、国民健康保険については、市町村が運営している国民健康保険(市町村国保)に加入している方が多いのですが、前年の所得金額に基づいて保険料が計算されるので、個人事業主としての仕事が順調で、事業所得が増えていくと、国民健康保険料も比例して増えてしまいます。
そこで、もう1つ選択肢があります。住所ごとに加入するのではなくて、同じ業種で仕事をしている方が加入する国民健康保険組合(国保組合)を選ぶことができるのです。
それでは、東京都大田区を例にとって、一般的な「市町村国保」と、クリエイター向けの国保組合である「文美国保」で、どれくらい保険料が違ってくるか比べてみましょう。例えば、一人暮らしをしている30歳のクリエイターの方で、事業所得(もうけ)が300万円あったとしましょう。「市町村国保」である東京都大田区の国民健康保険料は、年間で約30万1千円となります。これに対して、「文美国保」の場合は、年間で約23万5千円となります。「文美国保」のほうが、年間で6万6千円も安いのです(平成29年度の試算。年度や市区町村が違うと、結果が異なるのでご注意ください)。
事業所得が多くなってくると、市町村国保の保険料は増えていきますが、文美国保の保険料は定額ですので、両者の差はますます大きくなっていきます。国民健康保険料が高くてうんざりしている方は、文美国保のような国保組合への加入を検討することをおすすめします。ただし、国保組合への加入にはいくつか条件があります。文美国保では、皆さんの仕事に関係する業界団体への加入が条件となっています。
例えば、デザイナーだと「日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)」、アニメーターだと「日本アニメーター・演出協会(JAniCA)」といった業界団体に加入するところから始めないといけません。また扶養家族が多い方は、逆に文美国保のほうが高くなる場合もあります。文美国保のウェブサイトに、試算できるコーナーがあるので、あなたの家族の人数や所得金額を入れて、保険料がどれくらい安くなるかを比較してみましょう。詳しい加入方法の記述も掲載してあります。
<玄光社の本>
<著者の新刊>
本書の著者・桑原清幸さんの新刊「駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A」が10月29日に発売されます。本書と併せて、独立後の仕事とお金の管理に、是非お役立てください。