いわゆる「ヒーローもの」やSFに関連したテーマの物語においては、しばしば複雑な機構を持った機械やロボットが登場します。変形や合体など、世界観設定やコンセプトに沿ってデザインされ、人間には不可能な動きによって作品世界を表現する登場メカたちの魅力は、いつの時代も人々を惹きつけてやみません。
「メカニカルデザイン解体新書」では、「エルドランシリーズ」や「勇者王ガオガイガー」などのメカニカルデザインを手がけたメカニカルデザイナー・やまだたかひろ氏がデザインしたロボットや武器、乗り物の設定資料をもとに、デザインの考え方やテクニックを詳細に紹介。
キャラクターのラフやアイデアスケッチ、内部構造図のほか、変形ロボットの仕組みや、アニメーション化や玩具化を前提としたデザインの考え方、描き方の違いなども解説しています。
やまだたかひろ氏が過去に手がけた「熱血最強ゴウザウラー」や「勇者指令ダグオン」など多くの作品のイラストも収録している本書ですが、ここでは「版権イラスト作品と描き方テクニック」の章より、メカの色設定に関する記述を抜粋して紹介します。
色設定を考える
本来、色を考えるのは色彩設定の仕事です。しかし、どのパーツで色が分かれているかなどはある程度指示が必要です。玩具やCG、アニメの作画と同じキャラクターのメカでも色の設定に違いがあります。
POINT:CGで可能になったこと
CGの場合はメタリック表現やテクスチャーを貼り付けたり、マーキングなどの細かいディテールもつけられます。さらに迷彩塗装のような特殊な塗装も表現できるので、CGでは複雑な形状を再現できるだけではなく、塗装に関しても幅広い表現方法が可能になります。
- CGの場合はテクスチャーが使えたり、メタリックなど金属の質感のような表現もできます。鉄やアルミなど素材の違いなども表現できます。
- 恐竜メカのふくらはぎのパーツの関係で少しだけ水色のパーツが残っていますが、こういったパーツはアニメでは塗り間違いの原因になったりするので、アニメ用にはこういった部分はグレーで統一したりします。
カラープランニングの時点で目になる部分を赤にしてみたら、やはり口のように見えて生々しいので、最終的に緑に決定。
- 恐竜メカではほとんどカラープランニングができているので、新規のパーツのみ塗り分けを考えます。
POINT:作画やCGでどんな色指定ができるか把握しておくことが重要
作画用には線を減らすことも重要ですが、色数を減らすのが望ましいです。複雑に組み合わされたパーツはCGでは複数の色を使用しても大丈夫ですが、作画の場合は簡略化して色も1色にまとめるようにした方がいいでしょう。
- 玩具のパーツでは水色とグレーのパーツが組み合わせられていましたが、グレー1色にまとめています。
- 恐竜のキバをイメージしたモチーフも平面的に処理して、色の塗り分けで表現。
- 隙間は埋めてしまって、グレーで塗っています。
- 玩具バージョンではパーツ分けしていたのですが、アニメ用では一体化して、色の塗り分けと線で表現しています。
- ロボットが武器などを手に持った場合、指の間から見える武器の色を塗るのは手間なので、昔は手の色と武器の持ち手の部分を同じ色にして、仕上げの手間を省いたこともあるそうです。