『永沢まことの街歩きスケッチ入門』は、絵描き・イラストレーターの永沢まことさんが、日々の暮らしを営んでいる街のなかを歩きながら、感じたこと、気になったものや人や風景を気軽にスケッチする楽しさを紹介した一冊です。
第11回はいよいよ最終回。南フランスの古都でみかけたカフェのスケッチから作品に仕上げていくプロセスをご紹介します。
旅先で目に留まった「ミラボー通りのカフェ」
ここはセザンヌが生涯を過ごした街としても知られる、南仏の古都エクス・アン・プロヴァンスです。メインストリートのミラボー通りにやって来ました。前日から目をつけていた場所があるのです。
まずはラフスケッチから
【1】タテ描きかな…
スラリと高く伸びたプラタナスの木が前に立っています。真っ白いテントにBelle Epoqueと書かれたカフェ。これが本日のターゲットです。
【2】人物をスケッチ
まず目についた、キビキビと動くウェイトレスや、イスに腰かけてのんびりしているオジサンを軽くスケッチしてみます。
F8水彩紙で線描を始める
*F8:45.5cm × 37.9cm
【3】いきなりギュギューン
さあ、紙(ワットマンのF8)をタテに構えて、リブでギュギューンとプラタナスの幹を描いていきます。
【4】お次はカフェの人
ペンを筆サイン極細に替えて、さっそうと飲み物を運ぶウェイトレスや通行人を描きます。
近づいたり離れたり、じっくり観察して
【5】店内の人
暗い店内の人を近づいてスケッチ。私に気づいた人がおどけてポーズを取っています。
【6】窓を描いていく
カフェの建物の窓を、まず窓枠の線から描いていきます。こういう線はあまり硬くならず、かといって軟らかすぎないよう、ほど良い温かみの直線にします。
【7】窓に黒ツブシを入れる
窓に映るプラタナスの葉影を黒くペンで塗りつぶしてみたら、ガラス窓の感じが出てきました。
細かいところを描けば存在感が出る
【8】現場作業、完了
昼の休憩を挟んで約5時間、線描の仕上がりです。
私を囲んでいたギャラリーに見せたら、拍手をしてくれました。
色塗りは翌日、ホテルでゆっくり
【9】朝の色塗り
ホテルの広い庭の一角にあった木のテーブルで色塗りを始めます。まずは、パレットにオレンジを薄く、薄く溶いてから。
【10】木の陰を塗る
プラタナスの幹にペインズ・グレーで陰をつけていきます。幹の白さがグッと際立ってきました。
【11】空は最後に
6月のプロヴァンスの空は深い青です。ウィンザー・ブルー・グリーン・シェードにフレンチ・ウルトラマリンを加えて塗り込みました。
完成!
こんな具合で「ミラボー通りのカフェ」は仕上がりました。
どんな絵でも描き始めが大事です。この絵の場合、直感でプラタナスの木から思い切って入ったのが良かったようです。
「街歩きスケッチ」の題材は、自分が日々歩いている道でもあるし、買い物をする店でもあるし、時々行くカフェでもあります。ぜひ日々の生活の中で、それぞれの「街歩きスケッチ」を楽しんでみてください。
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