『本の虫の本』
林哲夫+能邨陽子+荻原魚雷+田中美穂+岡崎武志著 イラストレーション:赤井稚佳
(創元社)2,300 円+税/装丁+組版 : 納谷衣美
“本の虫”たちが“本にまつわるキーワード”を自由に解説するという、登場書物400冊超えの“本の世界への不思議な案内書”。それぞれを虫に例えた前書きと生態紹介という唐突な始まりに虚をつかれつつも読み進めれば、本好きを自認する者ならば誰しも読む手が止まらなくなるに違いない。2004年『Coyote』(スイッチ・パブリッシング)での特集をきっかけに、本の表紙を描き続けている赤井稚佳さんの“ブックイラストレーション”も必見。
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『春の一重』
切畑水葉著
(一迅社)980 円+税/装幀 : 永山千尋(BALCOLONY.)
切畑水葉さんが同人誌やSNSで発表した14編の漫画を収める短編集。春夏秋冬をテーマにキツネと人の日々の暮らしを温かに描く短編に続き、山で起こった事件の被告とその裁判に巻きこまれる証言者の「鵯の裁判」、風邪をひいた魔法使いが暴走する「おやすみなさいの魔法」など不穏な空気を感じる寓話のような物語もあり、不思議な世界に手招きされるような読み心地。同時刊行『草かんむりと嘘つきの庭』とリンクするストーリーも。
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『ぼく ここにいるよ』
マスダカルシ著
(静岡新聞社)1,200 円+税/装丁 : 利根川初美(823design)
ウサギの女の子が落とした真っ赤な手袋の兄弟。なんとか持ち主の元に戻ろうとしますが、旅路は長く険しくて……。本誌ザ・チョイスにも入選し“新聞切り絵作家”として活動するマスダカルシさんの初絵本は、なんと版元である静岡新聞社の新聞紙のカラー部分を使って作られているというから驚き。隅々まで丹念に描かれた優しい世界は何度見ても発見があり、見飽きることがありません。裏見返し「てぶくろがへんし~ん」もお見逃しなく。
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