本連載は、鮮やかな色彩と独自に作り込まれた世界観で人気のイラストレーター・藤ちょこさんがキャラクター造形や描き方を解説したメイキング・ブック『美しい幻想世界とキャラクターを描く』から、アジアンファンタジー世界を描いた作品の制作プロセスを追いながら、藤ちょこさんのクリエイティビティの秘密をご紹介しています。
第10回では、素材テクスチャーなどを使いながら、背景をこだわりをもって仕上げていきます。
背景⑤ 各所にテクスチャを貼っていく
❶自作テクスチャを背景に貼り込む
合成モード[オーバーレイ]のレイヤーで、街並みに自作のテクスチャを貼り込みます。
背景の縦パースに合わせて自由変形させ、パース感を補強します。
水彩色鉛筆で描いた自作のテクスチャ「nigi」。 |
レイヤー不透明度は27%と低め。隠し味程度に貼り込みます。 |
❷素材テクスチャを各所に貼り込む
細かなモチーフにもテクスチャを貼っていきます。テクスチャは素材のままではなく、色味やレイヤーの合成モードを変えるなどし、適宜調整しています。
【 背の帯 】
『和風伝統紋様素材集・雅』(SBクリエイティブ)より「3sy408」を背の帯に貼り込みます。 |
【 耳 】
『和風伝統紋様素材集・雅』(SBクリエイティブ)より「3sy217」を耳に貼り込みます。 |
【 帯揚げ 】
素材サイト『漱石枕流別館』より「アクリルキャンバス/ cゴールド」を帯揚げに貼り込みます。 |
背景⑥ 細部にこだわり演出を加えていく
❶袖の模様を描き起こす
右袖の模様は、伝統的な和柄を参考にしながら描き起こします。わかりやすいように色分けしながら下描きをし、線画を描いて色を乗せます。
線画を上から黄~クリーム色でなぞり、金糸のような立体感を出しています。 |
袖の起伏に沿って、模様をゆがませることを意識しながら描いています。
❷周囲に張子を描き込む
キャラクターの周囲に張子を散りばめます。画面の流れを作る重要なモチーフなので、配置にはかなり気を遣っています。
❸背景の街並みにモブを描き入れる
人が生活しているにぎやかさをわかりやすく演出します。モブそれぞれの状況や行動を想像しながら描きます。
モブを描くと同時に、背景の細かい質感なども描き込んでいきます。 |
POINT─────
この町では妖怪大事はごく日常的
上空の少女にモブの誰もがそこまで気を向けていません。この町で妖怪退治は、ごく日常的に行なわれているというのがわかりますね。
❹色彩遠近法で奥行きを与える
合成モード[通常]のレイヤーを新規作成し、キャラクター領域をオレンジ色、背景領域をくすんだ青色で塗りつぶします。
レイヤーの合成モードを[オーバーレイ]に変更し、不透明度は21%に下げました。
こうすることで、色彩遠近法により、キャラクターは手前、背景は奥に見えるようになります。
この[オーバーレイ]のレイヤーの中で、瞳の青色の部分にだけは背景と同じ青色を乗せて、青みを強調します。
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