『永沢まことの街歩きスケッチ入門』は、絵描き・イラストレーターの永沢まことさんが、日々の暮らしを営んでいる街のなかを歩きながら、感じたこと、気になったものや人や風景を気軽にスケッチする楽しさを紹介した一冊です。
第8回では、「自宅で(つまりモデルなしで)楽しくできる人物デッサン」の方法をご紹介します。
どう描く? 年齢、性別、服装が様々な「動く人」
生き生きとした人物が描けると、街、都会の絵はグーンと魅力的になりますね。さて、この多様でしかも動いている街の人物を、どう描いたらいいかということです。
私自身、ずっとこの街の「動く人」と取り組んできましたが、ハッキリ言って、誰でもできる簡単な方法はない、ということだけは確かです。
人物を描くための2つの基本「人物デッサン」と「人物クロッキー」に立ち戻ることが、何よりの近道だということです。あとの方の「人物クロッキー」は、街の中や電車の中で実行している人もいるし、ひとりでもできますが、難しいのが「人物デッサン」です。
そこで、私が「動く人」を描きたい一心? で続けてきた「自宅で(つまりモデルなしで)楽しくできる人物デッサン」の方法をご紹介します。この方法によれば、人物を描く基本となるデッサン力がつくだけではなく、その成果を、「動く人」を描くことにつなげていく、ということができます。
動く人を描くための人物デッサン
まずは形の良い後ろ姿の写真を用意
この方法は、ナマの人物モデルを使う代わりに「写真」を使う人物デッサンです。まず大事な教材である写真を1枚用意してください。
はじめは人物の体つきが分かりやすく、また描きやすい「全身の後ろ姿写真」にすること。立ち姿が棒立ちではなく、上の写真のように何となく「動き」があること。そして、体のシルエットがハッキリしているのがいいです。描く気をそそります。
カラーではなく、モノクロであること。写真を選んだら、スケッチブックと3Bくらいの鉛筆を用意してください。「ひとり人物デッサン」の開始です。
やってみると楽しい写実デッサン
描き込むほど、直すほど良くなってきます
① このように写真の人物に沿って8等分の線(グリッド線)を入れます。
② スケッチブックにもグリッド線を描き入れます。
この線を手掛かりにしながら、写真の線と見比べつつカタチをとる。
③ さあ、これから明暗デッサンです。写真と同じように鉛筆で陰をつけていきます。
④ 時間がかかっても自分が納得できるまで繰り返し直し、描き込んでいきましょう。
さあ、デッサンから「引き算」しましょう
「動く人」 が描けました!
この人物デッサンを勉強するポイントは、実は、人物デッサンが出来たあとに行う、「引き算」にあります。デッサン力、つまり写実力を持つのは大事なことですが、そこで終わってしまっては、「動く人」を描くことにつながりません。
苦労して描き込み、積み上げた自分のデッサンから、今度はまた、自分の力で線を削り落としていく「引き算」によって、ついにシンプルな線による「自分の人物」が生まれるのです。自分の人物は生きています。きっとうまく動いてくれます
⑤ 写真を見て自分の力で描いたデッサンをよく見てください。この写実力から「自分の人物」が生まれるのです。
⑥ 細かく描かれたデッサンの線を少しずつ削り、シンプルな線にします。デッサンからの「引き算」によって、線の人物が出来ました。
⑦ 「引き算」によって生まれた人物は、少々格好が悪くても生きています。
色を塗ってみるといいでしょう。
歩く人を「引き算描き」で描いてみる
線で描くと人物に動きが出るからフシギです
止まったポーズばかりでは飽きてしまいます。歩きポーズに挑戦しましょう。はじめはこのような、歩いている人を横から見た姿が描きやすいです。そのあと、後ろから見た姿、斜めから見た姿ですね。
動く人は楽しんで描くとうまくいく
サラリーマン
元気な人は背中がシャンとしていて大股で歩いています。
お年寄り
背中を丸く描くとお年寄りになりますが、胸を張っている人もけっこういます。
若い女性
服、バッグ、靴がひとりひとり違います。細部に要注意です。
子ども
手足の動きがとにかく大きくて早い。とても追いつきません。
海外旅行でも人物が描けると
イキイキしたスケッチに
ヨーロッパの街には、人の集まる広場や、道路に面したカフェテラスがあります。そこで人物ス
ケッチをやってみましょう。アジア系の人に比べると、ヨーロッパ系の人は動きが大きいので
描きやすいです。
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