ニコンZ 7/Z 6の瞳AF 河野英喜の撮り下ろしインプレッション!

ニコンのフルサイズミラーレスカメラZ 7/Z 6に「瞳AF」が搭載された。今年2月中旬に「ファームアップで対応」とアナウンスされ、ファームウェア公開まで3ヵ月あまり。すでに各カメラメーカーが導入している機能だけに、ニコンファン・ユーザーもその仕上がりが気になっていたことだろう。そこで、今や「瞳AFを使わない撮影はない!」という河野英喜カメラマンによる「瞳AF」のレビューをお届けする!

Z 7/Z 6ともに最新ファームウェアVer.2.0で瞳AFに対応!

 

 

Z 6にマウントアダプターFTZを装着し、FマウントのAF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gで撮影した。瞳AFの測距スピードと捕捉精度の高さはZマウントレンズ装着時と何ら遜色なく、ピントは“ガチピン”で気持ちいい。FマウントレンズでもZマウントレンズと同等の性能を発揮してくれる。

ニコンZ 6 AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G マルチパターン測光 WB:4760K ピクチャーコントロール:ポートレート フォーカスモード:AF-S RAW

model_ 花咲れあ(ゼロイチファミリア) hair&make-up_ 敷島清香(JULLY) stylist_ 工藤沙恵(ミタケイショウ)

ファインダー内の表示

上の画像はファインダー内の表示を記録したもの。

 

瞳AF に対応するだけでなく顔認識もレベルアップしている

5月16日、ニコンZ 7/Z 6のファームウエアがVer.2.0にアップデートされ、瞳AFが使えるようになった。この瞳AFは、AFエリアモードが[オートエリアAF]の時に利用できる機能。今まで[シングルポイントAF]など、任意設定でピントを合わせてきた人はちょっと頭を切り替える必要がある。

瞳AFは基本的にはカメラに近い瞳を捕捉する。モデルの動きやわずかな角度の変化によって奥の瞳を追うこともあるが、複数の瞳を検出すると黄色の三角マークで教えてくれるので、ピントを合わせたい方の目をサブセレクターかマルチセレクターで選択すればよい。これはもともとZシリーズの[顔認識]で運用されていた表示・操作を踏襲した形。「複数の瞳を検出しているけど、この瞳でOK?」と聞かれているようで、撮影者に対する気遣いも感じられ安心感がある。

また、当初から精度の高さで定評のあった[顔認識]も今回のファームアップでブラッシュアップされた。例えば上の写真のように比較的寄ったフレーミングの場合。顔の向きなどによって[顔認識]と瞳AFが自動で切り替わるものの、瞳AFが解除されたからといってピント精度が著しく低下するようなことはない。個人的に同様のフレーミングで何度もテストしたが、この部分はカメラを信頼できる。

スムーズな撮影にはフォーカスモードの選択も重要で、動きの少ないシーンはAF-S(シングルAF)で問題はない。測距中は黄色いAFフレームで表示され、フォーカスロックがかかれば緑色に変わる。少し動きの多いシーンではAF-C(コンティニュアスAF) が有効だ。僕はAF-Cの時も[レリーズ優先]に設定。これでAFは瞳を捕捉し続け、いつでもシャッターを切れる。

ニコンZ 6 NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 焦点距離:70mm f2.8 1/200秒 ISO400 
マルチパターン測光 WB:4760K  ピクチャーコントロール:ポートレート フォーカスモード:AF-C RAW

 

瞳AFと顔認識が切り替わるポイントを、画面手前から奥に後ずさりした時の距離で調べた。レンズの焦点距離は70mm。かなり顔が小さくても瞳AFが作動し、前髪で目が隠れそうになってもしっかり瞳を検出した。

 

[顔認識]でもヒット率の高かったガラス越しのシーンを瞳AFで撮影してみたが、[顔認識]以上の測距性能だ。作例のように横顔など瞳の一方が見えなくなった場合や、角度的に瞳の判別が難しい場合には[顔認識]に切り替わり瞳AFに迫る精度で測距し続けていた。

 

ニコンZ 6 NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 焦点距離:70mm f2.8 1/320秒 ISO200
マルチパターン測光 WB:4760K ピクチャーコントロール:ポートレート フォーカスモード:AF-S RAW

 

最新ファームウェアVer.2.0のカスタムメニューより。[顔認識と瞳認識する]に設定すると、画面内の人物の大きさに応じて、顔認識と瞳認識を自動で切り替える。

 

瞳を検出すると黄色の枠が表示される。複数の瞳を検出すると▲マークを表示。ピントを合わせる瞳はマルチセレクターもしくは、サブセレクターで選択する。

 

 

ニコンZ 6 NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 焦点距離:68mm f2.8 1/320秒 ISO100 マルチパターン測光 WB:4760K ピクチャーコントロール:ポートレート フォーカスモード:AF-C RAW
モデルの顔とカメラの間を遮る物があっても瞳AFは正確に測距するだろうか? スイカと口元を重ねて試したが、結果はご覧の通り何のためらいもなく瞳AFは正確に瞳を捉えた。

ピント精度をチェック!

ピントを合わせたモデルの右目を等倍で切り出した。ご覧の通り、“ガチピン”、いただきました! 絞りは開放から1段絞ったf4だが、コントラストの低い曇天で、この撮影距離(約2.2m)を考えると合焦精度は優秀だ。

 

ミラーレスになりフォーカスポイントはほぼ全面に配されたが、瞳AFが画面端のモデルの瞳を正確に検出できるか実写した。アングルを高くしたり目線に角度をつけたりしてみたが全く問題なし。

 

ニコンZ 6 NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S  焦点距離:70mm f2.8 1/200秒 ISO400 マルチパターン測光 WB:4760K ピクチャーコントロール:ポートレート フォーカスモード:AF-C RAW

 

今回のファームアップでZ 6のAF低輝度検出限界が-2EVから-3.5EVに向上。作例はかなり暗い状況での撮影だったが、[瞳AF]と[顔認識]が交互に切り替わりながらもモデルを捕捉し続けた。その精度も高く、ピントも正確だった。
ニコンZ 6 NIKKOR Z 50mm f/1.8 S  f1.8 1/50秒 ISO1600  マルチパターン測光 WB:4760K  ピクチャーコントロール:ポートレート  フォーカスモード:AF-S RAW

ピント精度をチェック!

 

顔認識と瞳認識の連携は絶妙。ピント精度も申し分ない

ファームアップしてから約1ヵ月、瞳AFを使い続けてみたが、シンプルかつ直感的で使いやすい、というのが僕の正直な感想だ。直感的に使用できるということは、撮影中に迷うことなくリアルタイムに変更を加えられるということで、常に顔の向きやポーズが変化するポートレート撮影で強力な武器になることは間違いない。

今回は日本家屋で自然光の撮影を行ったが、ポートレート撮影には様々なシーンがある。もちろん瞳AFにも捕捉しづらい状況があって、カメラに対する顔の角度などで[顔認識]に切り替わることもあるけれど、ふたつの機能が高い精度で連携しながら瞳にピントを合わせ続けてくれるので、撮影者はフレーミングとシャッタータイミングにより集中することができるというわけだ。

一部にマウントアダプターFTZを使用したFマウントのAFレンズでは瞳AFが効かないと誤解している方もいるかもしれないが、それは大きな間違い。前述した通り、AF速度も精度もZレンズと遜色ないので、安心してFマウントのAFレンズでZシリーズの瞳AFを使いこなしてほしい。

 

<メーカーサイト>
ニコンイメージング フルサイズミラーレスZ スペシャルコンテンツ
https://www.nikon-image.com/sp/mirrorless_z/

 


 

<イベント情報>

フォトテクニックデジタル主催 撮影会開催決定!
「ニコンZ 6 瞳AF対応ファームアップ版 体験・モデル撮影会 開催決定!」

開催日:2019年7月20日(土)
場所:都内ハウススタジオ

詳細、およびお申し込みはこちらから

 

フォトテクニックデジタル 2019年7月号

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