「押せばそれなりに写る」のがデジタルカメラの良いところですが、自分なりの表現を突き詰めたいと考えたときには「それなり以上」の使いこなしが求められるもの。高性能化が進み「可能なこと」が増えた現行世代のデジタルカメラにおいては、把握すべき事柄も増え続けています。
プロカメラマン・河野鉄平さんによる「デジタル一眼カメラ 知っておきたい撮影の基礎知識200」では、デジタルカメラの仕組みや特性、各種機能の使いどころ、構図の作り方、光の捉え方などなど、カメラ、ひいては「写真」を理解する上で必要となる基礎的な知識を掲載。個々の項目は細かく区切られており、確認したい知識をすぐに参照できる工夫がなされています。
本記事では、PART3「写真表現を左右するアイテムについての必須項目55」より、回折現象に関する記述を抜粋して紹介します。
絞り込みすぎて解像感が低下する回折現象
絞り羽根に光が回り込む現象
絞りはあまり絞り込みすぎると、被写体の輪郭がややぼやけ、不鮮明になります。これを回折現象や小絞りボケといいます。広角レンズでF16以上、望遠レンズでF18以上の絞り値で生じやすくなります。
回折現象は絞り穴を小さくした際に光が絞り羽根の後方に回り込むことが原因で生じる現象です。絞っているはずなのに、なんだか像がシャープに見えない場合には、この現象を疑い、絞りを少し開いてみましょう。
F22まで絞って撮影。拡大してみると像の輪郭が少しぼやけ不鮮明に見えます。回折現象はこうした輪郭のはっきりした被写体で注意が必要に。最小絞りは本当にそれが必要なときのみ利用しましょう。
レンズ性能はF8前後で画質がピークになる構造になっている
開放値付近の描写性にも注目しよう
前述の回折現象のように、画質は使用するF値に多大な影響を受けます。このとき大抵のレンズがF8前後で画質がピークになるように設計されていることも覚えておきたいです。具体的には画面の中心付近から広い範囲で高コントラスト、高解像感を維持できるのが、このF8前後になります。被写界深度をコントロールする必要のないときはとりあえずF8前後に絞り値を設定すれば、高精細な画質で撮影ができるのです。
なおレンズによって、開放値付近を利用する場合にも、解像感が低下してピントを合わせた部分の輪郭がにじんで見えることも。こんなときは絞り少し絞ってみましょう。像のにじみを解消できます。
絞り開放からの比較
F1.8
F2.2
わずかにF値を変えただけですが、解像感に大きな違いが生じています。高性能なレンズになると、こうした開放値付近の描写も非常に高い解像感を維持できます。