ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第38回のテーマは「薔薇」(バラ)です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. その場の雰囲気を活かして撮影しよう。
2. 狙いを明確にして、あえて極端な撮り方をしてみよう。
友人の結婚式にて。新婦がブーケを持っているところを撮りました。淡いけれど大人っぽいピンク色の薔薇が、新婦の落ち着いた人柄と、大人の幸せを感じさせてくれたので、控えめながらハッピーな感じが出るように、ややハイキーに仕上げました。
薔薇に託されたその場の役割
薔薇はお家の庭や公園で咲いていたり、イベントなどで飾られていたり、様々な場所で我々の目を楽しませてくれます。カラーバリエーションが豊富なのも魅力のひとつ。だから、ひと口に薔薇と言っても、シチュエーションや色みの組み合わせ次第で、雰囲気が大きく変わってきます。私は常に「この薔薇は、いまここでどういう役割を果たしているのか?」を考えて、それに合った空気感で撮影するようにしています。幸せの演出なのか、耽美的な美しさなのか…。
あえて極端な撮り方を意識
薔薇は、被写体としてすでに多くの人に撮り尽くされているだけに、あえて極端な撮り方をした方が面白いのではないかと思っています。とにかく花そのものの造形が独特なので、マクロレンズを使って大胆に花の一部を切り取ってみるとか。あるいは、雨上がりのあと、しずくが付着した美しい花びらを狙ってみるとか。また、公園などでは群生していることが多いので、超広角レンズを使い、パースを活かして撮影してみると、不思議な画が撮れて面白いです。
雨上がりにバラ園を歩いていたら真紅の薔薇にしずくがついていて、とても美しかったので、マクロレンズでぐっと寄ってみました。水滴のキラキラが目立つように、背景は暗く落ちる場所を選びました。赤と黒の組み合わせって、強い印象の画に仕上がりますよね。
こちらも雨上がりのバラ園で。これから咲こうとしている薔薇のつぼみに、しずくがついているのがいいなと思い、シャッターを切りました。萼(がく)についたまんまるのしずくが、薔薇のパーツのひとつに見えました。だから、しずくがついたつぼみ、を写したく思い、しずくに寄るのではなく、少し引いて全体を捉えました。
青く晴れ渡った空に向かって、ビビッドなピンク色の薔薇が咲き誇っている様子が、なんとも生命力にあふれているように見えました。そこで、全景を写しとりたいと思い、20mmの広角レンズで大胆に広く収めてみました。