ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第37回のテーマは「チューリップ」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1.「華やかさ」と「グロテスクさ」の両面からアプローチしてみよう。
2. 様々なアングルから撮影したり大胆に色を変えてみよう。
小さい頃から、真上から見た時のチューリップが怖くて仕方がありませんでした。おそらくこの内部の黒い部分がそう感じさせるのだと思います。横から見ると可憐なのに、上から見ると食虫植物のような雰囲気を感じてしまいます。でも、怖いもの見たさで必ず上から撮ってしまいます。
チューリップの“怖さ”に注目
チューリップといえば春の代名詞。たくさんの品種があり、花の色も様々で華やかな印象です。しかし! よく見るとちょっとグロテスクなところもあります。花を上から覗くと妙に黒っぽかったり、厚みのある花が群生している様子がどこか怖かったり。そう思っているのは私だけかもしれませんが…。ということで、感覚に正直に撮影するのがモットーである私は、チューリップを撮る時は、「華やかさ」と「グロテスクさ」の両面から捉えるようにしています。
アングル違いで様々な表情
チューリップがたくさん咲いている場所の方が、バラエティに富んだ作品を生み出せるので、できるだけ群生しているところを選びましょう。チューリップは、撮影する角度によって全く表情が違います。真上から、横から、下から…と、様々なアングルから眺めてみましょう。「この角度はこんな風に見えるのか!」と発見があるはずです。また、チューリップはホワイトバランスを思い切って変えてみるなど、色を大胆に変化させると違った印象になり面白いです。
チューリップは花のひとつひとつに存在感があるので、どうしても花に寄ってしまいがちですが、ちょっと引いてみると、また違った景色を見ることができます。花に集中しすぎた時は、休憩がてら周りを眺めてみましょう。この時は、桜の花びらが流れる小川の周りにカラフルなチューリップが咲いていて「春爛漫」という感じでした。
思い切って全体的な色みを寒色系に振ってみた一枚です。実際は明るく可愛らしい感じでしたが、写真では少し不気味になりました。「ちょっと怖い」というチューリップへの心象を写せたので、気に入っています。
チューリップの「華やか」というイメージを写した一枚です。望遠レンズで、絞りを開放にして、全体を大きくぼかすと空気感が出て軽やかになります。