2000年代以降、デジタルカメラを内蔵する携帯端末が広く普及し、私たちの日常生活は「写真撮影」と共にあるといっても過言ではありません。その一方で、近年になってフィルム写真も再評価されており、「古くて新しい写真表現」を評価する価値観の中で、写真表現に新たな広がりが訪れています。
写真は「現像」作業によっていかようにでも変化します。その性質は、デジタルでもフィルムでも変わりません。しかし根本的な部分で、デジタル写真はフィルム写真とは似て非なるものです。そしてそれは、デジタルがアナログに近づく余地を残しているということでもあるのです。
書籍「デジタルでフィルムを再現したい」では、デジタル写真現像ソフト「Lightroom Classic」を用いて、デジタル写真をフィルムの風合いに近づけるテクニックを紹介しています。まったくのゼロからフィルムの色合いを再現するのは大変な作業ですので、本書で色調やトーンなど、各種パラメータコントロールの基本を身につけるのも一つの手でしょう。
本記事では第4章「ポジフィルムとモノクロフィルムの再現」より、いわゆる「記憶色」を再現する色味の調整方法を紹介します。
高彩度ポジフィルムのような夕景
Before
作品タイトル:「湖の夕景」
シチュエーション:夕刻、晴れ、逆光/斜光、自然光
After
Step0:仕上がりをイメージする
実際の夕景は、Beforeの写真のようにうっすらとオレンジがかったぐらいの色合いでしたが、記憶の中の光景はもっと印象的でした。富士フイルムの高彩度フィルム、Velvia 100で撮ったような色調を目指して編集していきます。
Step1:ポイントカーブでベースを作る
ポイントカーブ
ゆるやかなS字にして、コントラストを高くする。また、暗部を少し持ち上げてフエード感を出す。
ポイントカーブ(R)
ゆるやかな S 字にして、コントラストを高くする。また、暗部を少し持ち上げてフエード感を出す。
ポイントカーブ(G)
グリーンを引くことで、全体的にマゼンタを効かせる。
ポイントカーブ(B)
特に変更しない。
Step2:露光量とカラーを調整する
ライトとカラーのツールを使って、Step1のポイントカーブでの作業を補完します。
露光量:+1.40
全体的に暗いため、露光量を上げる。
色温度:+5
わずかに暖色寄りにパラメーターを動かし、温かみを出す。
Step3:明暗別色補正を調整する
Step2までで赤系統の色を強調したので、シャドウにネイビー系の色をかぶせて、バランスを取ります。
明暗別色補正(シャドウ)
色相:245
彩度:11
高彩度フィルム Velvia で撮ったような印象的な色合いに仕上がり、記憶の中の夕景を再現できた。