ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第33回のテーマは「橋」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 客観的に捉えるのか、主観的に捉えるのかを決める。
2. 様々な角度から眺め、撮影ポイントを探す。
ダム湖に浮かぶ桟橋を俯瞰で撮影しました。エメラルドグリーンの水面と、オレンジ色の浮きの色がポップでかわいいと思って眺めていたのですが、ちょうど派手な色の服を着た人が通ったので、絵としてバランスがよいところでシャッターを切りました。
客観的表現か、主観的表現か?
橋を撮る時は、まず、客観的に捉えるか、主観的に捉えるかを決めると、絵をつくりやすくなります。客観的に捉える場合は、建築としての形の面白さや、渡っている人とのバランスがよいと思った時にシャッターを切りましょう。主観的に捉える場合は、自分が橋を渡った時、どういう気持ちだったのかが伝わるような絵を心がけましょう。そのスケールに圧倒されているのか、お友だちと一緒で楽しいのか、高低差がスリリングなのか…などなど。
様々な角度から橋を観察する
橋は様々な形で我々の目の前に存在しています。アーチ型のものは下をくぐれたりします。そこで、自由に移動できる場合は、いろいろな角度から橋を眺めてみることをオススメします。真上から見た場合と、下から見た場合、また実際に渡ってみた時と、それぞれ景色が異なってくると思います。ただ、橋はスケールが大きいものが多いので、まるごと写し取りたい場合は35mm以上の広角レンズを使いましょう。あえて超広角レンズを使い、歪ませても面白いですね。
赤い橋桁を、橋の出入り口付近から反対方向へ向かって眺めてみると、まるで、あやとりの糸が絡まっているみたいだなと思いました。最初はその糸が絡まるようなゴチャゴチャとした感じを写したかったのですが、少し引いてみると、背景の緑が入った方が、補色関係にある赤が引き立つと思ったので、引いたままの構図を採用しました。
夕暮れ時の東京ゲートブリッジを、少し離れた場所から撮影しました。空のグラデーションと、シルエットになった橋の姿が美しいと思ったので、その両方を収められる位置を選びました。普通に撮るのでは面白くないと思ったので、あえて曇ったレンズを使用し、ハイライトがぼんやりとにじみファンタジックな印象になるよう仕上げました。
北海道で、親戚と吊橋を渡っていた時、下を流れる湧き水がきれいであることに気が付きました。水、きれいだね、と言いながら下を向いたら、水面に写った橋と人の影が面白かったので、あえて橋の下を撮りました。