ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第32回のテーマは「花火」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. ワンテンポ早くシャッターを切るようにする。
2. 線香花火など小さな花火はマクロレンズで撮影。
花火は、盛大に燃焼している時はもちろん美しいのですが、終わりに近づき、燃える力が弱くなってきたあたりも儚さがあり綺麗だな、と思います。背景の黒っぽい面積をあえて大きくし、メインの花火をやや小さく写すことで、火力が小さくなっていく様子を表現しました。
集中力を切らさず撮り続ける
花のような火、とはよく言ったもので、色鮮やかで儚い火炎は我々の心を掴んで離しません。花火を撮影する時に最も大切なのは「集中力」と「反射神経」です。打ち上げ・手持ち、どちらも燃焼時間が大変短く、しかも刻一刻と形状が変化します。したがって、その中でベストな絵を収められるように集中力を切らさないことが重要です。また「いま、いい絵だ!」と思った瞬間にシャッターボタンを押すと遅いことが多いので、私はいい絵になりそうな時の少し前にシャッターを押します。
色彩が際立つ背景を選んで撮る
なんと言っても花火の良さは「色」にあると思うので、その色彩が引き立つように背景が暗く落ちる場所を選びましょう。また、花火は水しぶきと一緒で、自分の意思で形状をコントロールするのが難しいものです。そこで、良い絵を撮りきる自信のない方は連写機能を使うことをおすすめします。あと、線香花火など、とても小さなサイズの花火を撮影する時はマクロレンズを使用しましょう。ただし、夢中になり近づきすぎると機材が焦げるのでご注意を。
近づいてみると、カラフルな煙の中に、さらに色とりどりの火花が細かく散っていることがわかります。肉眼だと色や煙の移り変わりをざっくりと眺めるだけで、火花や煙ひとつひとつの形を観察することはできません。しかし、こうやって写真に撮影することで、あとで、その一瞬一瞬の様子を楽しむことができます。
黒い背景に浮かび上がる色のついた煙と火。フレーム内で2つがバランス良く収まっている絵が撮れると気持ちがよいです。「バランス」を重視した写真の練習をしたい方に、花火撮影はぴったりではないかと思います。
花火は色によって絵の印象が変わります。私は、それが好きだったりします。この時は真紅の花火はまるで心臓のようだな……と思い眺めていました。ちなみにこの写真は3本の花火を一緒に燃焼させています。花火を複数本にすると、絵も重厚な印象になるのでお試しあれ。ただし、あまりにたくさん燃やしすぎると危ないので、安全第一で。