アニメーション作品において、ある事象や現象の「動き」を表現するにあたっては、主体となる登場人物や物体を動かすほかに、動きに伴って環境に変化が起きたことを示す「エフェクト」の描写が必要です。
作品世界で起きた現象を表現するのにきわめて重要な要素でありながら、それ単体では注目されにくい「エフェクト」。アニメーターは現実に起こりうる現象から、物理法則を無視した表現にいたるまで、あらゆるシーンで説得力のある視覚効果を描く必要があります。
「アニメーションのエフェクト作画テクニック」では、「弱虫ペダル GLORY LINE」や「楽園追放 -Expelled From Paradise-」などの作品でエフェクト作画監督をつとめたアニメーターの小澤和則さんが、様々なエフェクトの作画技術を伝えています。「炎」「水」「風」「光」「爆発」などのエフェクトについて動感を出すコツを解説しながら、「炎+煙」など、複数のエフェクトを組み合わせて見せる表現方法にも言及しており、アニメ作画の幅を拡げる実践的な内容です。
本記事では、Chapter3「風」より、「竜巻」と「吸い込み」を表現する風の作例、また両者を組み合わせた作例を一部抜粋して掲載します。
風のエフェクトは単体でも使用できますが、炎や爆発と組み合わせることでより迫力のあるエフェクト表現が可能になります。使い勝手の良い風や迫力のある竜巻などを参考にしてみてください。
竜巻
竜巻の形を描いて、渦巻いている感じを出すために円上に線をたくさん描き、濃い青で描いている大きな影の部分を回転方向に送っていけば竜巻の動きに見えます。影の部分は少し大きめにして影面積で表現すると回転しているように見えます。
あとは賑やかし程度に赤で描いたハイライトを入れておけば密度は足ります。動かす時は中割り無しにしたほうがコントロールしやすいと思います。大体5~6枚あれば大丈夫ですかね。
竜巻全体のフォルムはそれほど大きくは変わりません。回転している感じを出すポイントは、影の部分です。影を回転方向に動かしていくことで竜巻が回転しているように見えます。
竜巻に合わせる風
これは上の竜巻に重ねるためのエフェクトです。竜巻が奥に配置するAセルで、こちらの風はその手前に重ねるBセルというイメージですね。下に吸い込まれていくというイメージで、それを表現するために上から下へと移動する影を青で入れています。
竜巻と風を合わせた場合
自然災害の竜巻であれば竜巻だけで良いのですが、例えば魔法で吸い込む竜巻を表現する場合は、上から下に向かって吸い込んでいる風を表現したエフェクトも重ねます。エフェクトは複数のエフェクトを重ねることで異なった状況を表現することができます。