多くの領域における「技術」は、それぞれの分野において確固たる基本、基礎の上に成り立っているものです。
では、「絵の腕前を上達させたい」と思ったときに基本となる技術は何でしょうか。その一つとしてよく挙げられるのが「デッサン」です。描こうとしているものの形や構造、光の当たり方と陰影の出方をよく観察し、認識し、できるだけ正確に表現すること。それは現職の中にも改めて習うプロがいるほどに重要な技術です。
「比較でわかる初心者デッサンの教科書」では、基本的な図形から立体表現、透視図法、陰影のトーン、素材感、光沢、構図など、絵を描く上で基本的な知識を豊富な作例と図解で解説。改善前と改善後のデッサンを比較できる形で提示し「ありがちなミス」への気づきを促す構成となっています。
本書はアナログ画材でのデッサンを練習する主旨の書籍ですが、本連載ではデジタル環境での練習にも応用して使える知識や概念を中心に掲載します。
本記事では、第5章「重要な構図の知識」より、モチーフを4つにした際の構図の例について解説します。
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4つのモチーフの構図
四角形に並べるだけではなく、基本構図に沿って配置することで、画面の印象が大きく変わります。
基本構図
四角構図
上下左右にモチーフを配置して、4 つのモチーフを均等に見せる構図。
T字構図(横)
1つのモチーフを強調し、モチーフ間の位置や空間の関係性を見せる構図。
T字構図(縦)
縦画面に用いることで、1つのモチーフをより強調することができる。手前に1つ、奥に3つの配置でも同じ効果が出せる。
アドバイス
構図とは、描くべき題材をきちんと画面に収めることではない。画面の中で自分がなにを主張したいかによって構図を考えることが大切。
Y字構図
手前のモチーフを主役としたとき、奥のモチーフが引き立て役になるバランスの構図。
Y字構図(逆)
手前のモチーフが門のような役割を果たし、奥のモチーフへと視線を移動させる効果がある構図。
Z字構図
モチーフをジグザグに配置すると、奥行きを強く表現できる。横画面より縦画面のほうが高い効果が出る。
アドバイス
よい構図は、明解なコンセプトを表現し、見る人の視線を誘導して画面に引き込む効果を生み出す。
比較:構図で決まる作品の良し悪し
悪い構図
- モチーフが寄りすぎて、ごちゃごちゃしているうえ、位置関係がはっきりしていない。
- 各モチーフの調子が同じで、モチーフごとの材質の違いを表現しきれていない。
- モチーフを右側に寄せてしまったため、左側に空きができている。
- モチーフ間が狭いため空間表現ができず、くっついて見えてしまう。
良い構図
- 少し重ね合わせて配置し、位置関係をわかりやすく見せている。
- Z字構図によって視線が手前から奥へと送り込まれるように描かれている。
- 各モチーフの影の方向をきちんと合わせて描いている。