イラストレーションはもちろん、写真や映像など視覚に訴えかける媒体においては、登場人物の感情や作品世界の表現に、しばしば「モノクローム」が採用されます。
モノクロの画面は一般的に、カラー画面よりも色彩の情報が少ない分、主題の「明暗」や「形」に意識が向きやすいと言われています。モノクロのイラストレーション、とりわけキャラクターの表現においては、線の使い分けやラインの引き方、質感の表現方法、影の付け方、塗り方を工夫することによって、モノクロならではの独特な雰囲気を演出することも可能であり、それはモノクロイラストが持つ魅力の一つでもあります。
「モノクロイラストテクニック」は、モノクロでキャラクターを作画する際のテクニックを紹介する指南書です。イラストレーター・jacoさんによる詳細なテクニック解説をはじめ、カラーイラストにはない表現手法、イラストのクオリティチェックを行うために見るべきポイントなども紹介するほか、jacoさんが得意とする「角娘」(角の生えた少女)のモノクロイラスト集としても楽しめる一冊にまとまっています。
本記事では、第2章「描き込みによる質感の出し方」より、服や布の質感を表現する線の引き方についての記述を抜粋してお伝えします。
服や布の質感の表現
線画が完成したら、次はディテールを描き込む作業が待っています。さて、服のシワや影の入れ方はどうしたらいいのでしょう。色が使えないモノクロのイラストレーションでは、タッチだけで質感を表現しなくてはいけません。ここでは服や布の質感が表現できる作画方法をご紹介します。
- 服の流れに沿わせて描き込み、柔らかくフワッとした質感を目指します。
- 線は交差させず、カクカクしないよう滑らかに。
- 体に巻きついていることを意識し、平面的にならないように。
- 黒ベタが重くならないよう、ハイライトや反射光を組み合わせ軽さを表現します。
ドレスのシワの描き込みテクニック
布のシワの端は、左のように急に途切れることはありません。線の端に平行なタッチを重ねてシワの終わりをなだらかにし、周囲になじませます。
左のようなU字状のシワに、直接シワの線を描くと凹凸がハッキリしすぎてイメージした質感になりません。そのような時はシワの線を直接描かずに、平行に描いたタッチの端にシワがあるように描きます。
このような波形の形状の場合なら、布の向きに従い、タッチの向きを揃えると立体感が出せます。
服で隠れてしまう足や胸、腕などもラフの時に描いておきます。
体に服を着せるように描いていくと服の形を出しやすくなります。陰影をつけるときも体のラインが目安になります。
作画例
服で見えなくても、自然な体のラインが表現できます。
ロングスカートでほとんど隠れてしまう足も描いておきます。
体の動きに合わせたスカートのヒダを描くことができます。
複雑なデザインの服も、着せるように描きます。
<玄光社の本>