かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができます。これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つです。
「オールドレンズ・ライフ 2018-2019」に掲載している特集のひとつ、「マニアが隠れて使う名レンズ」では、シンプルに写りの良い名玉ではなく、使いこなし方を把握し、条件を揃えてはじめて楽しめる特徴的な描写を持つレンズ、ある意味「隠れ家」的なレンズを紹介しています。
本記事ではその中のひとつ、「PO3-3M 50mm F2」の作例と解説を紹介します。
実力派ゆえのパンクロコピーという噂 KMZ「PO3-3M 50mm F2」
昨今、ロシア製の35mmフィルムムービー用レンズが人気を集めている。35mmフィルムムービーカメラは映画制作で用いられることが多く、対応したシネレンズはどれも高解像度な実力派ばかり。それはロシア製シネレンズも例外ではない。中でも人気なのが、このPO3-3M 50mm F2である。
PO3はパンクロコピーではないかとオールドレンズマニアの間で噂されている。パンクロとは、テーラーホブソン社のクックスピードパンクロシリーズのことだ。ハリウッド御用達のレンズと言えば、その高性能ぶりが伝わるだろう。実のところ、パンクロコピーの確証はないが、時代やレンズ構成を加味すると、PO3がクックスピードパンクロ50mm F2を意識していた可能性は高い。何よりも、PO3の優れた描写力が、パンクロコピー伝説をさもありなんと思わせるのだ。
本レンズは35mmフィルムムービー用なので、APS-Cモードで使うとレンズ本来の画角で撮れる。実際にAPS-Cモードで撮ると、隅々まで緻密に解像し、ロシアレンズの中でも群を抜く高解像度ぶりだ。フルサイズでは若干四隅がケラレるが、中心部の高描写と周辺の緩い描写が同居し、ハイブリッドな写りを堪能できる。APS-Cとフルサイズでふたつの味わいを楽しめる。