オールドレンズ・ライフ
第16回

35mmフルサイズとAPS-Cで二度おいしい「PO3-3M 50mm F2」

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができます。これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つです。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019」に掲載している特集のひとつ、「マニアが隠れて使う名レンズ」では、シンプルに写りの良い名玉ではなく、使いこなし方を把握し、条件を揃えてはじめて楽しめる特徴的な描写を持つレンズ、ある意味「隠れ家」的なレンズを紹介しています。

本記事ではその中のひとつ、「PO3-3M 50mm F2」の作例と解説を紹介します。

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オールドレンズ・ライフ 2018-2019

実力派ゆえのパンクロコピーという噂 KMZ「PO3-3M 50mm F2」

α7II + PO3-3M 50mm F2 絞り優先AE F2.8 1/2500秒 ISO100 AWB RAW フルサイズ撮影だと、周辺光量落ちで四隅が暗くなる。残雪と影のコントラストが良い。

昨今、ロシア製の35mmフィルムムービー用レンズが人気を集めている。35mmフィルムムービーカメラは映画制作で用いられることが多く、対応したシネレンズはどれも高解像度な実力派ばかり。それはロシア製シネレンズも例外ではない。中でも人気なのが、このPO3-3M 50mm F2である。

PO3はパンクロコピーではないかとオールドレンズマニアの間で噂されている。パンクロとは、テーラーホブソン社のクックスピードパンクロシリーズのことだ。ハリウッド御用達のレンズと言えば、その高性能ぶりが伝わるだろう。実のところ、パンクロコピーの確証はないが、時代やレンズ構成を加味すると、PO3がクックスピードパンクロ50mm F2を意識していた可能性は高い。何よりも、PO3の優れた描写力が、パンクロコピー伝説をさもありなんと思わせるのだ。

本レンズは35mmフィルムムービー用なので、APS-Cモードで使うとレンズ本来の画角で撮れる。実際にAPS-Cモードで撮ると、隅々まで緻密に解像し、ロシアレンズの中でも群を抜く高解像度ぶりだ。フルサイズでは若干四隅がケラレるが、中心部の高描写と周辺の緩い描写が同居し、ハイブリッドな写りを堪能できる。APS-Cとフルサイズでふたつの味わいを楽しめる。

Leica M10 + PO3-3M 50mm F2 絞り優先AE F2.8 1/2000秒 ISO100 AWB RAW ピントを合わせた葉のエッジが実に繊細だ。自然なボケ方も好感が持てる。レンガ塀に落ちる濃い影が印象的だ。
PO3-3M 50mm F2 中古価格:20,000~45,000円 L39 mount modified 主に1940年代から1950年代に製造された4群6枚のシネレンズ。ムービーカメラ用をL39マウントに改造して販売していることが多い。
L39-SE(S)税別価格:10,000円 SHOTENは焦点工房のオリジナルブランドで、デザイン性を重視したマウントアダプターを開発している。シルバーとブラックの2色展開だ。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

 

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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