本連載は、鮮やかな色彩と独自に作り込まれた世界観で人気のイラストレーター・藤ちょこさんがキャラクター造形や描き方を解説したメイキング・ブック『美しい幻想世界とキャラクターを描く』から、アジアンファンタジー世界を描いた作品の制作プロセスを追いながら、藤ちょこさんのクリエイティビティの秘密をご紹介しています。
第9回は、背景の細部を描き、全体を整えるテクニックを披露します。
背景③ 細部を描き込みリアリティを加えていく
❶あたたかみを光で演出する
合成モード[加算(発光)]のレイヤーを新規作成し、[エアブラシ]で窓や提灯に光を足してリアリティを加えます。また、屋根の瓦の起伏や看板など、細部を描き込んでいきます。
【鳥居】
【看板】
看板を描き込むことで生活感を出します。
【窓の光】
窓の光はオレンジなどの暖色系にすると、あたたかみや親しみやすさが出ます。
【棚】
❷大まかな色と形で奥の街並みを描く
奥の街並みは、手前の建物ほどしっかり描き込まず、大まかな色と形でそれらしく描いていきます。
実際の風景でも、遠景のものは大まかな形しか見えません。遠景のものをきっちり描き込みすぎると、かえって遠近感が出なくなってしまいます。
❸街並みの色合いを落ち着かせる
合成モード[比較(明)]のレイヤーを新規作成し、奥の街並みに全体に灰がかった紫色を乗せ、くすんだ色合いにして印象を落ち着かせます。
くすんだ印象になるほか、空気遠近法によって奥に見える効果もあります。
❹流れを意識して夜空を描く
コバルトグリーンや紺色などで、薄く雲を描き入れて空間の流れを表現します。地上からの光を考えて雲の
下部は明るくします。
星は合成モード[加算(発光)]のレイヤーを新規作成し、[エアブラシ(飛沫)]をメインに描き入れます。[Gペン]でところどころ大きさや色を変えた星も描き入れ、ランダムな印象にします。
❺煙を描き和を演出する
画面に流れを出すため、キャラクターの前面に煙エフェクトを入れました。日本画の雲を参考にうねりをもったような形にし、あえて平面的に処理します。
背景④ 背景全体を整えていく
❶背景全体の色をまとめる
合成モード[比較(明)]のレイヤーで、背景全体に灰紫色をかけて色をまとめると同時に、空気遠近法により遠くに霞んで見えるようにします。
空にかかる部分は[消しゴム]ツールで消し、全体がぼんやりしないようにしています。モチーフのキワに彩度の高い差し色を入れ、色の印象を複雑にします。
❷モチーフの色の印象を複雑にする
合成モード[オーバーレイ]のレイヤーを新規作成し、スカートや右腕のリボン、耳の赤い部分に鮮やかな赤色を足します。
モチーフのキワに彩度の高い差し色を入れ、色の印象を複雑にします。
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