大村祐里子の露出レシピ
第5回(最終回)

フィルムカメラとリバーサルフィルムで露出計を使ってみよう!

写真はカメラ、スマホ任せでシャッターボタンを押すだけできれいに撮れる世の中になりました。しかし、それで本当に自分の表現したい写真を撮れているのでしょうか?
写真家の大村祐里子さんは、『「光」をよく知ること、「光」を読むこと、そして「光」を作ることで写真が変わる』と言います。カメラ任せではなく、自分の目で被写体をよく見て、そこから表現したい光を作っていくことがプロの技なのです。
この連載では、シェフに扮した大村祐里子さんが、料理をするのではなく、撮影テクニックとしての露出のレシピを公開していきます。

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「露出レシピ」もいよいよ最終回です。これまでの記事では、少し難しい数値のお話もしてきました。もしかすると、それをご覧になって「露出計を使いこなすのは大変だな」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、露出計は撮影を難しくするために存在しているのではありません。そこで、最終回は、露出計を使って写真を「楽しむ」ことに焦点を当ててみます。具体的には、いままでとは趣向を変えて、フィルムカメラにリバーサルフィルムを装填して撮影をしてみたいと思います。わたしはフィルムカメラが大好きなので……。

リバーサルフィルムは、ネガフィルムに比べるとラティチュード(光の量に対する寛容度・範囲)がとても狭いため、撮影時に露出をきちんと合わせる必要があります。そのため、リバーサルフィルムを使った撮影では、露出計が必須となります。詳しくは後述します。

 

今回使用する機材
セコニック ツインメイト L-208

第1回目の記事でも登場した、セコニックの「ツインメイト L-208」を使います。

「ツインメイト L-208」はレトロでかわいらしく、手の中にすっぽり収まるサイズが魅力的です。露出計の搭載されていないクラシックカメラを使用する際のお供としても最高です。標準付属品のシュー取付板を装着すれば、カメラのホットシューに常時取り付けて使用することもできます(この場合、測光方式は「反射光式」となります)。基本的にはこのスタイルが楽で良いでしょう。

反射光式は33°の範囲を測光します。スケール板上の扇形の部分が33°を表しています。カメラ内蔵のTTL中央部重点測光と同じような露出の測り方になる、ということは覚えておきましょう。

「ツインメイト L-208」は、反射光式だけではなく、入射光式で測光もできます。露出にシビアなリバーサルフィルムを使用する場合は、被写体の反射率に左右されず、ピンポイントで測光できる入射光式を織り交ぜて使うと、より正確な露出が得られます。

今回は、基本的には入射光式を用いて測光しています。ただ、被写体に近づけないような場合は、反射光式を採用しています。

コンパクトなボディーのため、カメラのホットシューに取り付けて、反射光式で使用することができるので便利です

 

今回使用するのは、リバーサルフィルム(ポジフィルム)

リバーサルフィルム(ポジフィルムとも呼ばれます)は、現像が済むと、その状態が完成品となります。ぱっと見ただけで、何が撮影されているかわかります。鮮やかでリアルな色再現、高い解像感は、ネガフィルムでは味わえないものです。ライトボックス上でリバーサルフィルムを眺めているときの気持ちよさは格別です。

リバーサルフィルムは露出がシビア、露出計があればベスト

しかし、ネガフィルムに比べると、ラティチュード(光の量に対する寛容度・範囲)がたいへん狭いため、撮影時に露出をきちんと合わせないと適正な絵が得られない、という特徴があります。ネガフィルムは、多少オーバーやアンダーだったとしても、現像やプリントの段階で色や濃度の補正がある程度できますが、リバーサルフィルムは、ネガフィルムと比べると、補正できる範囲が非常に狭いのです。

よって、リバーサルフィルムを使う場合は、露出計を使い、正しい露出を知り、撮影をする必要があります。

記事内では、富士フイルムの「プロビア100F」を使用しました。今回はナチュラルな発色のフィルムで撮りたかったので、ベルビアではなくプロビアを選びました。

 

今回のロケ地は、動物と自然がいっぱい、被写体が豊富なマザー牧場!

ロケ地:マザー牧場

今回は写真を「楽しむ」ことが目的なので、やはり、自分が撮っていて楽しいと思えるものを撮影しなければなりません。

私の好きなものは、ズバリ!動物と自然です。その両方を撮影できる場所はどこだろう……と考えた結果、東京から車で1時間ちょっとの「マザー牧場」がピッタリなことに気が付きました。

そこで、真夏の灼熱の下、シェフの格好をしてマザー牧場へ突撃してきました!

カメラは、ライカ R5と、ミノルタ ミノルチナ-S、の2台を使いました。両方とも露出計が内蔵されているのですが、経年劣化により精度があやしくなっていたため、すべて「ツインメイト L-208」で測光した値を採用しました。

到着していきなり乗馬を楽しむシェフゆり子

 

満開の「桃色吐息(ペチュニア)」を撮る

一面、鮮やかなピンク色で覆われた山肌。お花の名前は「桃色吐息」(ペチュニア)。なんと悩ましい。

奥まで続くピンク色のじゅうたんが綺麗だと思ったので、その光景をまるごと写したいと思いました。露出計を山肌の向こう側へ向けて、反射光式で測光しました。

【シェフゆり子の調理結果】

ライカ R5 F11 1/500 ISO100 富士フイルム プロビア100F

 

ライカ R5 F5.6 1/250 ISO100 富士フイルム プロビア100F

今度は、ピンク色の花に寄った絵を撮ってみたいと思いました。入射光式にして、お花の前で光球をレンズに向けて測光しました。花の色が鮮やかに出てくれました。

 

日陰で休むモノトーンのヤギを撮る

日陰でのんびり座っていたヤギがいました。AFや連射機能のない機材を使っているので、動きのない動物は被写体としてありがたい存在です。そっと近づいて撮影しようと思いましたが、ヤギはどういうわけか「ツインメイト L-208」に興味津々で、まったく止まっていてくれませんでした……。

ヤギの白い毛を白色として描写する露出を知るには、入射光式で測光する必要があります。そこで、ヤギの顔の目の前で、光球をレンズに向けて入射光式で測光しました。ヤギの「なにそれ?」という声が聞こえてきそうな一枚が撮れました。かわいい。

【シェフゆり子の調理結果】

ライカ R5 F11 1/500 ISO100 富士フイルム プロビア100F

牧場を遠景で撮る

牛舎とサイロを背景に草を食べる牛、がTHE・牧場、という感じで良いなと思いました。

このように、柵で囲われていて被写体である牛に近づけないような場合でも、入射光式で測光できます。カメラの位置で腕を伸ばして、光球をレンズに向けて測光すればOKです。なぜなら、太陽の光は、自分が立っている場所と牛の場所に同じ強さで降り注いでいます。ということは、どこで露出を測っても、値に大きな差は出ません。

【シェフゆり子の調理結果】

ライカ R5 F8 1/500 ISO100 富士フイルム プロビア100F

 

うす暗い牛舎にいる牛を撮る

牛舎の中にいる牛たちを、窓から覗き込んで撮影しました。中には入れなかったので、外から反射光式で測光しました。被写体に近づけず、しかも被写体の周りが薄暗いような場合は、入射光式が使えません。こういうときは反射光式が便利ですね。

【シェフゆり子の調理結果】

ライカ R5 F4 1/60 ISO100 富士フイルム プロビア100F

室内のウサギを撮る

休憩中のウサギに近づいてみました。ウサギの目の前で、光球をレンズに向けて入射光式で測光しました。小さなツインメイト L-208は動物たちを驚かせません(ヤギは逆に興味津々でしたが……)。ウサギの柔らかな毛の質感をありありと思い出せる一枚になりました。もふもふ。

【シェフゆり子の調理結果】

ライカ R5 F2.8 1/60 ISO100 富士フイルム プロビア100F

 

夏の強い逆光の下でメリーゴーランドを撮る

メリーゴーランドと自分には、同じくらいの太陽の光が降り注いでいると思ったので、カメラの位置で腕を伸ばして、光球をレンズに向けて入射光式で測光しました。

【シェフゆり子の調理結果】

ミノルチナ-S F8 1/500 ISO100 富士フイルム プロビア100F

 

ひまわり畑でひまわりを撮る

まずは、空の青色をしっかりと出した一枚を撮影したいと思ったので、露出計を空の方に向け、反射光式で測光しました。空は青く描写されましたが、その分、ひまわりは少し暗くなりました。

【シェフゆり子の調理結果】

ミノルチナ-S F11 1/500 ISO100 富士フイルム プロビア100F

 

次は、ひまわりそのものの色をきちんと出したいと思ったので、ひまわりの前で、光球をレンズに向けて入射光式で測光しました。ひまわりの黄色は鮮やかに描写されましたが、空は白っぽくなってしまいました。
空とひまわり、どちらを重要視するかで測光方法も変わってきます。

【シェフゆり子の調理結果】

ミノルチナ-S F8 1/500 ISO100 富士フイルム プロビア100F

 

ツインメイト L-208には、ホットシューに取り付けられるアダプターが付属しています。小さなフィルムカメラに乗せても違和感なく、そして便利に使うことができます。

 

<シェフゆり子・ギャラリー>

ミノルチナ-S F11 1/500 ISO100 富士フイルム プロビア100F
ライカ R5 F8 1/125 ISO100 富士フイルム プロビア100F
ライカ R5 F11 1/250 ISO100 富士フイルム プロビア100F

 

まとめ

写真を始めた頃は、リバーサルフィルムを装填しているのに、露出をきちんと測らずに撮影することも多々ありました。現像から返ってきたフィルムを見ると、ド・アンダーや、ド・オーバーのものばかりで、写したかったものがまったく写せておらず「ああ……」と落胆することばかりでした。

しかし、露出計のことを勉強して、被写体に合わせて入射光式と反射光式を使い分けられるようになってからは、大きな失敗をすることはなくなりました。今回も、写したかったものが写せていて、ライトボックス上で現像したリバーサルフィルムを眺めているときウキウキしました。そして「写真って楽しいなあ」と思いました。

写真は光をうつすものです。

露出計を使えば、その場の光の量やバランスを、数値で正確に把握できます。それができるようになれば、自分の思い通りの写真が撮れるようになり、写真を撮るのがもっともっと楽しくなります。

この「露出レシピ」が、少しでも、皆様の写真表現のお役に立てたら幸いです。


メーカーサイト:セコニック ツインメイト L-208

販売サイトはこちら

協力:セコニック https://www.sekonic.co.jp/


撮影協力・ロケ地 マザー牧場について

マザー牧場は、四季折々の草花にあふれ、愛らしい動物たちとのふれあいが楽しめるだけでなく、バンジージャンプや遊園地などのアトラクションもたくさんあり、大人も子供も一日中楽しめる場所です。写真を撮る人にとっては、フォトジェニックな被写体に溢れる素晴らしいロケ地です。

<マザー牧場>
住所:〒299-1601 千葉県富津市田倉940−3
TEL:0439-37-3211
営業時間と休園日、各種料金などの詳細はマザー牧場ウェブサイトにてご確認ください。

ウェブサイト:http://www.motherfarm.co.jp/

羊の毛刈りを目の前で見られるシープショー
牛舎のある「うしの牧場」内で「乳牛の手しぼり体験」も開催されていました。
遊園地も併設していて、楽しみがいっぱい
うさモルハウスでは、ウサギとモルモットとふれあうことができます。

 

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。雑誌連載:『フォトテクニックデジタル』にて「身近なものの撮り方辞典」を連載中。

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
Twitter:@Holy_Garden


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