星雲や惑星、夜空を埋め尽くす星空には、見る人の心を揺さぶるものがあります。誰しも一度は、星空を写真に記録したい、と考えるのではないでしょうか。
星空と地上風景の両方を構図に入れた写真は、一般的に星景写真と呼ばれます。主役はあくまでも星空ですが、地上の自然や建造物を写し込むことで、星空の魅力が引き立つことから、天体写真の中でも人気のあるジャンルです。
技術評論社が発売している「星空撮影の教科書」では、星空写真にまつわる様々なテーマを、著者で天体写真家の中西昭雄さんによる作例とともに解説。星空を撮影するにあたって必要となる機材から天球の動き、撮影に適した時間帯、場所の選び方、合成処理を前提とした撮影方法、海外遠征時の留意点にいたるまで、星空撮影の初心者からベテランまで、幅広いレベルの撮影者に役立つ一冊となっています。
本記事では、Chapter4「星空撮影 シーン別テクニック入門編」より、赤道儀を使った「春の北斗七星」おおぐま座の撮り方を紹介します。
POINT
- 24mm前後の広角レンズを使う
- 北斗七星以外の星は暗いため、構図を決めるのに要注意
- 正中時の高度が高いため、フレーミングしにくいこともある
春の北斗七星(おおぐま座)を撮る
春を代表する星の並びが、多くの人が見たことのある北斗七星です。24mmの広角レンズを使って、その7つの星を1つの画面に収めてみましょう。
大きな星座であるおおぐま座を、24mmレンズを用いることにより、程よく収めることができました。この作品は、画質を高めるために赤道儀を使用しています。高感度撮影を行うことで赤道儀を使用しない方法もありますが、星座写真の場合には赤道儀を用いると、より高画質を狙うことができます。
春の北斗七星
北の空でひしゃくのように並んだ7つの星という意味です。「おおぐま座」を構成する一部となっています。
24㎜の広角レンズで赤道儀を使い高画質に北斗七星を捉える
春を代表する星の並びといえば、やはり北斗七星でしょう。7つの星がみごとな「ひしゃく」の形を作っており、そこから北の方角を示す北極星を探すのにも役立ちます。しかし北斗七星は、星座ではありません。北斗七星はおおぐま座の一部であり、大熊の腰から尻尾のあたりに相当するのです。
そんなおおぐま座は、かなり大きな星座です。全体を画面に収めるには、28mm広角レンズでもいっぱいいっぱいで、少し余裕をみるなら24mmくらいのレンズが必要になります。またおおぐま座は正中時にほとんど天頂近くまで昇ってきますので、普通の三脚と雲台ではフレーミングしにくいかもしれません。3WAY雲台の場合は、通常とはカメラを逆向きに装着する「逆付け」が必要になるでしょう。手持ちの機材を上手に使って、構図を決めてください。おおぐま座は北斗七星以外は暗い星が多く、構図を合わせるのが難しいかもしれません。撮影した画像を再生して確認しながら、慎重に調整しましょう。
三脚に固定して星座を撮影する場合、ISO感度は3200や6400 を用います。レンズの明るさがF2.8なら、15秒くらいの露出で適正な露出になるでしょう。ですが、高ISO感度で撮影すると、どうしても画質が低くなります。より高い画質で撮影するには、天体を追尾する赤道儀を用います。ISO感度を落として長秒撮影することで、星が点像に保たれます。また併せて絞りを少し絞ることで、低ISO感度と相まって高画質を実現できます。
赤道儀にカメラをセットした状態です。赤道儀には天体望遠鏡を載せるための大型のものもありますが、広角レンズでの撮影目的なら、写真のような小型で持ち運びやすい赤道儀の方が撮影しやすくおすすめです。
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