写真が上達するキーワード事典
第2回

写真の「テーマ」って何だろう?

多くの人がスマートフォンを手にするようになり、日常的に写真を撮るようになりました。近年のスマホはアプリの機能も充実しており、特に写真撮影の知識がなくても、ひとまず使っていれば使い方は覚えられるものです。

ただ、TLで見かけたインフルエンサーの写真のような、目を惹く写真を撮りたい!となると、用語の意味を知る必要が出てきます。

写真が上達するキーワード事典」では、写真撮影にまつわる100の用語を個別に解説。本格的に写真を学ぶにあたって頻出する用語について理解を深めることができます。

本記事では「テーマ」について解説します。

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写真が上達するキーワード事典

撮りたいと感じた何かや伝えたいことを言語化

行動や創作などの基準となる考えが「テーマ」です。「主題」ともいいます。テーマは写真表現の中心となる大切なもので、作品に統一性を与える効果があります。複数の写真で作品を構成するときは独自の観点で選んだり組み合わせたりしますが、テーマがその軸となるのです。写真はシャッターボタンを押すだけで撮れるので、テーマがなくても特に困ることはありません。でも、伝わる写真が撮りたい、評価される作品を作りたいと考えているのであれば、テーマを持って取り組んでみると良いでしょう。

ジャンル別の写真は、それらの被写体やシーンに興味がない人には響きにくいこともあります。自分が好きであるだけでなく、その魅力を伝えようとする何かがあると鑑賞者の受け取り方も違ってくるでしょう。その何かを言語化し、それをテーマに選んで作品制作に取り組むのです。そのテーマを意識しながら撮影したり、写真を選んで構成することで、同じジャンルでも他人とは違った表現ができるようになるでしょう。また、それらの写真を楽しんでいる人以外からも作品に対して共感を得られやすくなるはずです。

被写体やシーンを見て何かを感じて撮ろうと思ったことが写真で伝えたいことになります。それが「主題」であり「テーマ」です。写真を撮るときに無意識に考えていることなのですが、伝わる表現、伝わる写真を望むのならそれらを言語化する努力をしてみると良いでしょう。組写真に限らず単写真でもセレクトするときの基準になるほか、テーマからタイトルとなる言葉を導き出すこともできます。文章を書くのが苦手な人は面倒に感じられるかもしれませんが、自分の表現を理解する手助けとなります。

テーマとモチーフが混同している作品では「うまい」「きれい」以上の何かが足りない傾向です。例えば作品のテーマを「花」「東京」「旅」などしているケースがありますが、それらはどちらかといえばモチーフです。また「うまい」「きれい」などはテーマといえますが、それらを基準にまとめても在り来たりな感じになりがちで、独創性という点では少しもの足りません。

風景やスポーツなどのジャンル別の写真でも、テーマがあればそれに沿ったアプローチが可能になり、表現に個性が出てより魅力的な作品になります。

テーマは日常生活の中から見つけよう

自宅の近くや部屋の中、通勤や通学の途中、職場や学校の周りなど写真はいつでもどこでも撮影できます。視点や発想を変えるだけで、日常生活の中から独創的な表現が生まれやすくなります。フォトジェニックとは思えない何気ない被写体やシーンでも、それらを見て感じたことや伝えたい気持ちがあれば、それがテーマとなり作品になるのです。

モチーフをつなぎ合わせてテーマを形に

テーマを表現するうえで具体的な要素となるのがモチーフです。作品の題材でもあり、モチーフとの出合いから撮り始めることもあるでしょう。動機となる出来事などもモチーフといえます。毛糸などの編み物では、小片をつなぎ合わせて1つの作品にすることを「モチーフつなぎ」と呼びます。写真の場合もモチーフをつなぎ合わせながら1つの作品にまとめていきます。

想像力をかき立てる言葉を選ぼう

テーマは特定の被写体やシーンを連想する言葉ではないほうが良いでしょう。例えば「風」「音」「時」など、写真に直接写せないもののほうが想像力をかき立てられます。モチーフの選択肢や表現の幅も広げやすいです。「記憶」「余韻」などは「遠い記憶」「旅の余韻」といった具合にテーマを掘り下げることもできます。

単写真もテーマがあったほうが良い

いつも同じ視点で被写体探しをしがちで、何か変化を求めるなら単写真でもテーマがあったほうが良いでしょう。テーマに選んだ言葉を意識しながら撮り進めることになり、これまで見向きもしなかった被写体やシーンに気持ちが動かされたりします。得意とするジャンルでも、テーマに沿ったアプローチなどを試みるようになります。


写真が上達するキーワード事典

著者プロフィール

岡嶋 和幸

岡嶋和幸(おかじま かずゆき)

1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「ディングル」「風と土」のほか著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」「潮彩」「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」「九十九里」「風と土」「海のほとり」などがある。

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