写真撮影の道具たるカメラはその誕生以来、様々な進化を遂げてきました。それはカメラ自体が持つ機能だけでなく、被写体と直接相対するレンズも同様であり、長い歴史の中で、多くの交換レンズが生まれ、今なお撮影に用いられています。昨今、マウントアダプターの普及に伴って、最新のカメラで古いレンズを使う楽しみ方も広く知られるようになりました。
「オールドレンズ 銘玉セレクション」では、国内外のオールドレンズを外観写真や作例とともに紹介。そのレンズが開発された時代における新規性や立ち位置、技術的な背景など、オールドレンズにまつわる知識を深めることができる一冊となっています。
本記事では第4章「時代を駆け巡ったレンズメーカーの栄枯盛衰」より、「Soligor 58mm F1.5」の作例と解説を紹介します。
一眼レフカメラの発展に寄与したメーカー Miranda Camera「Soligor 58mm F1.5」
ミランダカメラの全身はオリオン精機産業として世田谷に設立される。設立メンバーは萩原章と大塚新太郎で、東京帝国大学付属航空研究所で初期のジェットやロケットの開発に関わった人物である。終戦により、ジェットやロケットの研究が禁止されてしまったので、カメラの修理やマウントカプラーやミラーボックスなどのアクセサリーの生産などを開始した。
いち早く一眼レフカメラの可能性を感じた彼らは1954年にフェニックスカメラの試作に成功した。その後、フェニックスカメラを改良し1855年にミランダTを発売した。ミランダTは国産カメラ初のペンタプリズムを搭載したカメラで当時最新鋭の機構であった。ミランダという名前の定着もあり1957年に「ミランダカメラ株式会社」に変更。今回紹介するレンズは1960年に発売されたミランダD型に装着されていたとされるものだ。そのころミランダは海外でしか発売されていなかったので、その存在は謎だ。