オールドレンズ銘玉セレクション
第6回

独特な構成による独特な描写の「FUJI PHOTO FILM X-Fujinon 55mm F2.2」

写真撮影の道具たるカメラはその誕生以来、様々な進化を遂げてきました。それはカメラ自体が持つ機能だけでなく、被写体と直接相対するレンズも同様であり、長い歴史の中で、多くの交換レンズが生まれ、今なお撮影に用いられています。昨今、マウントアダプターの普及に伴って、最新のカメラで古いレンズを使う楽しみ方も広く知られるようになりました。

オールドレンズ 銘玉セレクション」では、国内外のオールドレンズを外観写真や作例とともに紹介。そのレンズが開発された時代における新規性や立ち位置、技術的な背景など、オールドレンズにまつわる知識を深めることができる一冊となっています。

本記事では第3章「再評価される銘玉」より、「FUJI PHOTO FILM X-Fujinon 55mm F2.2」の作例と解説を紹介します。

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オールドレンズ銘玉セレクション

独特な構成による独特な描写の「FUJI PHOTO FILM X-Fujinon 55mm F2.2」

SONY α7R 開放1/2000秒 ISO250 WB:マニュアル RAW FujicaAX-LeicaMアダプターを使うことで近接撮影も可能になる。アダプターは希少であるがライカMマウント加工されたレンズも流通している。

Xフジノン55ミリF2.2はフジフイルムの35ミリ判カメラ「フジカAX」用の標準レンズだ。フジカの中でも特にエントリークラス用のセットレンズとして用意されたこのレンズはコスト軽減を目指した結果、他のメーカーにはない独特なレンズ構成にたどり着いた。

テッサーと同じ4枚レンズながら貼り合わせ面をなくし、さらにテッサーよりも明るいF2.2を実現した。このユニークなレンズ構成のフジノンの後ボケは硬めで「2線ボケ」や「バブルボケ」的な後ボケを見せる。移りもビビットで虹ゴーストも出やすい。面白いレンズであるがAXマウントというフジの独自マウントを採用しているため、アダプターの選択肢が少ない。よりメジャーなM42マウントを採用したバージョンもある。

しかしこのレンズは鏡胴がやわらかいプラスチックでできており、鏡胴に亀裂が入っているものが多い。またレンズの描写はやややわらかく虹ゴーストが出にくいといった描写の違いもある。

SONY α7R 開放1/2000秒 ISO250 WB:マニュアル RAW 以前は嫌われていた2線ボケや玉ボケ、ゴーストなどの写りがデジカメ時代に入り再評価されこのレンズの写りも再評価されるよ うになった。二線ボケ、バブルボケ、虹ゴーストを併せ持つ写りは新時代のオールドレンズの魅力を体現したようなレンズだ。
SONY α7R 開放1/2000秒 ISO250 WB:マニュアル RAW F2.2クラスのレンズの割にはボケ量が大きい。2線ボケ傾向の背景からこのレンズが球面収差の過剰補正を行った設計であることがわかる。コストを抑えつつそこそこボケるレンズを作った結果だがその結果他に見られない個性のレンズが誕生した。
Fujica AX マウント 中古価格:5000円~2万円 1980年に始まったFUJICA AXシリーズ用の標準レンズ。以前のUJICA用にも同スペックのレンズが存在したが、それらはM42マウントを採用していた。この新しいXシリーズではAXマウントを採用している。このマウントは1985 年のSTX-2(輸出モデル)で姿を消した短命のマウントになる。

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