大村祐里子の身近なものの撮り方辞典
第49回

「東京タワー」の妖しい魅力を引き出す、天候の力

ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。

「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第49回のテーマは「東京タワー」です。

大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。

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身近なものの撮り方辞典

撮影のポイント

1. 夜や悪天候の日に撮ると、東京タワーの魅力がさらに増す。
2. 撮影ポイントによってイメージも大きく変化。

リコーイメージングPENTAX 645NII smc PENTAX-FA645 75mmF2.8 Kodak PORTRA 800 f2.8 1/15秒

自分の撮った写真の中で、最も「東京タワーらしい!」と思える一枚です。夜、空が厚い雲に覆われていました。雲に東京タワーのライトが反射して、夜なのに空がオレンジや赤に染まっていて、なんともあやしい雰囲気でした。その空気感をしっかり収めることができたなと思います。

実はその魅力は「あやしさ」

東京のシンボルである東京タワーは大好きな被写体です。私はこの近くで生まれ育ったので、人一倍思い入れがあるのだと思います。そんな自分からすると、東京タワーは「あやしい」雰囲気に撮影した方が魅力的です! ということで、夜や雨、悪天候の日ほどその存在がひときわ輝くように思えます。今回ご紹介している東京タワーの写真も、そういう日に撮ったものばかりです。みなさまもぜひ、条件が悪そうな日に東京タワーにレンズを向けてみてくださいませ。

ライトアップ時がオススメ

東京タワーは撮影するポイントによって印象が変わります。真下から見上げるように撮ると、東京タワーの重厚な存在感がぐっと引き立ちます。広角レンズを使うと、よりそれが際立ちます。また、近隣の高い場所から引いた視点で東京タワーを撮ると、情景と絡んだ写真に仕上がります。おすすめの時間帯はライトアップされた夜です。日によって色が違うので、好きな色みの日を狙って撮影しましょう。私は赤くライトアップされた日が東京タワーらしくて好きです。

Mamiya C330 Mamiya-Sekor 105mm f3.5 DS Kodak PORTRA 800 f2.8 1/15秒

夜、六本木の高層ビルの展望台に上って撮影した東京タワーです。キラキラした感じを出したかったので、ネオンをぼかして撮影したものを多重露光しています。

Mamiya C330 Mamiya-Sekor 105mm f3.5 DS Kodak PORTRA 400 f16 1/30秒

雨の日、同じく六本木の高層ビルから撮影したものです。雨のしっとりした感じがよかったので、あえてガラスについた水滴にピントを合わせ、東京タワーだとわかる程度にぼかしました。

リコーイメージングPENTAX 645NII smc PENTAX-FA645 75mmF2.8 Kodak PORTRA 800 f2.8 1/8秒

実はこれ、失敗写真です。カメラをちゃんとホールドできなくて、撮った時に「ああブレちゃったな」と思いました。でも、現像してみると、そのブレが東京タワーを巨大ロボットのように見せていて、いまにも進みだしそうな力強さがあっていいなと思いました。


身近なものの撮り方辞典

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:YURIKO OMURA
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