ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第48回のテーマは「ビル」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. ビルの造形そのものよりも、窓に注目すると面白い。
2. ビルの美しさは直線。ゆえになるべく歪みの少ない広角レンズを選ぼう。
台湾の高いビルの上から、下を見下ろして撮影しました。白だけではなく、赤や緑色をした屋根が積み重なっている様子が、まるで積み木のようでかわいいなと思いました。ちょっと不思議な感じを出したかったので、写真の真ん中を、道がナナメに横切るような構図にして遊んでみました。
ビルそのものより窓に注目
ビルの面白さは「窓がいっぱいあるところ」だと思っています。そして、窓の色や灯りから、中の人の生活形態が透けて見えるのが好きです。特にオフィスビルは、夜になると、人がいるフロアだけ明かりが灯っていて、それ以外は消えて真っ黒になっていることがあります。そんな窓の色や明るさのコントラストを観察し、中の様子を想像するのはいつも楽しいです。だから、私はビルそのものの造形よりも、窓のあり方に注目して撮影をしています。
なるべく歪みの少ないレンズで
ビルはとても大きなものなので、全体を写そうとするなら、広角レンズは必須です。ただし、ビルの美しさはその直線にあると思います。ゆえに、私は超広角レンズでビルを歪ませて撮るのがあまり好きではありません。できるだけ歪みの少ない広角レンズで撮影し、それでも歪みが気になる場合は、RAW現像時に直線がしっかりと出るように調整しています。ビルの輪郭や、四角い窓がきちんと再現されている写真はとても気持ちが良くて好きです。
散歩中に撮った一枚です。黒い窓、青い窓、緑の窓…。目の前にあるビルひとつとっても、窓に様々なバリエーションがあり、それが気になったのでシャッターを切りました。露出をややアンダーにし、窓の色が際立つようにしています。
霞む高層ビル群を撮影しました。直線がしっかりと出た方がすっきりとした仕上がりになるので、水平・垂直に気をつけました。
台湾の雑居ビルです。日本と違って、室外機が窓の横に取り付けられていたりするので、だいぶゴチャゴチャとした印象です。生活感のある雑多な感じが面白く、いいなと思ったので撮ってみました。