被写体としての「空」は、誰もが見上げればいつでも目にすることができ、その時々で様々な表情を見せてくれる、身近で手軽な存在です。しかし誰が撮っても「それなり」の絵になる一方で、写真映像作品として「それなり以上」を目指すのであれば、技術を磨き、機材を整えるだけでは足りず、さらにひと工夫もふた工夫も必要になる奥深さがあるジャンルでもあります。
「四季の空 撮り方レシピブック」では、日本の四季に見られる気象現象を中心として、「空」にまつわる様々な作例と、撮り方のコツを解説しています。また、機材選びやカメラ設定についても言及しており、様々な条件がありうる気象撮影における勘所を掴むのにも役立つ一冊となっています。
本記事では「四季の空を撮る・冬の空」の章より、「彩雲」の作例を抜粋して紹介します。
彩雲
彩雲は不思議な色彩が雲に現れる現象で、さまざまなバリエーションがある。意外と小さいので、望遠レンズで撮影することになるが、撮り方には少しコツがある。
太陽の近くの彩雲
日中の彩雲は太陽の近くに現れるが、冬でも太陽の光はかなり強く、構図に入れるのは危険なので避けよう。特に光学ファインダーでの撮影は要注意だ。
彩雲は太陽の近くで、うろこ雲(巻積雲)やひつじ雲(高積雲)などに色がついて見える現象だ。わた雲(積雲)でも見られることがある。薄い雲や、だんだんと消えていくような雲に現れやすく、空気の乾燥した秋から冬にかけて多く見られる。空気が澄んでいることも条件の一つで、山や高原では夏に見られることもある。春は空がくすんでいるので、出現していたとしても気がつきにくい。彩雲の色の数は日中の方が多いが、朝方や夕方は太陽からやや離れて現れるので観察しやすい。
光環と彩雲
太陽のまわりで丸く色づいているのが光環だ。その外側を彩雲と呼び区別するが、光環と彩雲は、写真のように繋がっていることもある。
彩雲は意外と小さいので、望遠レンズで撮影しよう。また、測光モードはスポット測光に設定して、全体を暗めに表現すると、彩雲の色が際立つ。カメラの色調をコントロールする機能をビビッドなどに設定すると、色が鮮やかになる。また、彩雲が現れた雲は刻々と形が変化していくので、タイミング良く撮影していこう。朝方や夕方の雲は黄色や橙色に染まり、彩雲もやや赤みを帯びた色になる。どれも違う色や形であるため、撮影するたびにコレクションが増えていくのも楽しみの一つだ。
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