Lightroomではじめる 風景写真RAW現像テクニック
第2回

青空と桜の「清々しさ」を表現する透明感の出し方

デジタルカメラやスマートフォンでは、撮影した写真の記録形式として「JPEG」のほか「RAW」という設定項目を選べることがあります。RAWは一言でいえば「撮影画像の生データ」。データ容量が大きいかわりに、JPEGよりも多くの情報を持っている未圧縮の画像ファイルです。

RAWはほかの画像ファイルに比べて特殊で、専用のソフトが必要になるなど扱いも難しく、「すぐ見られなくて面倒くさそう」「難しそう」といった理由で、RAWでの記録を敬遠している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

Lightroomではじめる 風景写真RAW現像テクニック」では風景写真をメインに、RAW現像ソフト「Lightroom」を使ったプロの現像テクニックを紹介。作例とした写真表現の方向性に「威風堂々」「爽快感」「幽玄」といったテーマを設定し、写真を調整する際の考え方や具体的な手順を学べます。

本記事では第2章「初級編」より、「清々しさ」をテーマにした作例の調整について解説します。

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Lightroomではじめる 風景写真RAW現像テクニック

長い冬を耐え忍び、春の陽気に歓喜する桜の姿を清々しく描きとる

満開となるタイミングを見計らって訪ねた桜の里。ここ数日間の天気予報を見る限り、青空で撮影できるのはこの日しかなかった。撮影現場に到着すると天気予報通りに青空が広がり、遠景の山並みも見えていたのだが、この時期らしい春霞であった。思いのほかヌケが悪く、遠景の山並みや青空にあらかじめ思い描いていた透明感が感じられない。PLフィルターを使用してみたものの、十分な効果は得られなかった。そこで背景の透明感を引き出して清々しく表現し、ようやく長い冬が去り待ち焦がれた春の到来を喜んでいるかのような桜たちの姿をさわやかに表現しようと考えた。

Before(現像処理前)
画面左側からの光が当たる斜光という条件。この日は晴天であり輝度差の少ない被写体であったため、露出補正は行わず構図に神経を集中していた。RAW現像ではハイライトのディテールを残しつつ桜の明るさを引き出し、青空のすっきり感を強調することを目標とした。

After(RAW現像)

1. 露光量を加え、明るさを引き出す
画像全体の明るさを整えるため露光量スライダーを「+1.75」に調整。ハイライトが白飛びしないよう桜の明るさを引き出す。

2. ハイライトのディテールを引き出す
白飛びこそしていないものの、画面左上のハイライトのディテールが消失気味。そこで、ハイライトスライダーを「-80」に調整。

3. 空と背景の透明感を引き出す
かすんだ背景のヌケをよくするには「かすみの除去」が効果的。そこで「+80」に調整し、青空の透明感と背景のヌケの良さを引き出した。


Lightroomではじめる 風景写真RAW現像テクニック

著者プロフィール

萩原 史郎&萩原 俊哉

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(*現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。2015年に初個展「色X情」を開催。東京を皮切りに、仙台、福岡、名古屋へと巡回。

カメラグランプリ選考委員
オリンパスデジタルカレッジ講師・山コミュ管理人
日本風景写真家協会会員(JSPA)

 

萩原俊哉(はぎはら・としや)

1964年山梨県甲府市生まれ。 広告代理店に入社、食品関連の広告制作に配属、カタログ制作、イベント企画等に携わる。 退社後、フリーのカメラマンに転向。浅間山北麓の広大な風景に魅せられて、2007年に拠点を移し、2008年に本格的に嬬恋村に移住。 現在自然風景を中心に撮影、写真雑誌等に執筆。2014年11月にはBS11テレビ番組「すてきな写真旅2」に出演。2020年4月逝去。

書籍(玄光社):
風景写真の便利帳
自然風景撮影 基本からわかる光・形・色の活かし方
自然風景撮影 上達の鉄則60
RAWから仕上げる風景写真テクニック
風景&ネイチャー構図決定へのアプローチ法

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