ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
第26回のテーマは「雲」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 季節や天候、時間帯で変化する雲。いつでも撮影できるよう準備をしよう。
2. 広角レンズを使い、絞って撮ってディテールを表現。
雲というのはメインの被写体にもなれますし、空を彩る「脇役」としても活躍できる万能な存在だと思います。この写真は、どちらかというと飛んでいる鳥を引き立てるために、雲をテクスチャとしてフレームに入れました。雲がなければ寂しい写真になっていたでしょうが、この通り、雲のおかげでなんだかドラマティックに仕上がりました。
いつでもすぐに撮れる準備を
雲は身近で絵になりやすい存在なので、おすすめの被写体です。しかし、手軽に撮れてしまうゆえに、世の中には雲の写真が大量に出回っており、その中でインパクトのある強烈な一枚を残すのは難しいとも言えます。時間や天気によって刻一刻と色や形が変わってしまうものでもあるので、満足のいく雲の写真を撮るためには、常にカメラを持ち歩き、ここぞ! という時にすぐ構えられるようにしておくことが、何よりも大切なことではないかと思います。
雲は広角レンズで絞って撮る
広い空に、広範囲にわたって散らばっていることが多い雲。よって、広角レンズで撮影した方が、狙った雲をきちんとフレーム内に収められる確率が上がります。また、雲のディテールをしっかり描いた方が、壮大さや迫力が出るので、絞って撮ることをおすすめします。さらに、飛行機の窓から撮影する雲も面白いです。いつも見上げているものが、眼下にあるというだけでだいぶ違った絵が撮れるはずです。私は飛行機の窓から見える雲が大好きです。
宮古島で撮影した夕景です。日没直前、太陽が雲の後ろに隠れると、ハイライトとシャドウの明暗差が強く出て、雲の質感がよくわかるようになります。私はこの時間帯がとても好きです。刻一刻と変わる雲の質感をじっくり楽しむのも一興です。
夏の日の夕暮れ時の一枚です。空に浮かぶ雲がとても不思議な形をしていて、雲というより、何かの模様のように見えて面白かったので思わずシャッターを切りました。「何かに見える」というアプローチで雲を撮影するのも面白いですね。
私の大好きな、飛行機の中からの一枚です。雲と雲に挟まれた空間は、普段、地上で生活していると見ることができない光景です。飛行機に乗ると、夜でない限り、離陸してからもずっと窓の外を眺めてしまいます。窓の反射と、白い雲が十字架のようにクロスしているところがドラマティックでいいなぁと思いました。