ライカMLレンズ・ベストセレクション
第3回

フレア、ぐるぐるボケ、収差ありのクセ玉レンズ SUMMARIT 5cm F1.5

オールドレンズに興味を持つと、いつかライカレンズを使ってみたいと憧れを抱く人は多いだろう。特にズミクロン、ズミルックス、ノクティルックスなどのオールドライカレンズは、まさに憧れの的そのものだ。

写真家の澤村徹氏は「ライカMLレンズ・ベストセレクション」で、新旧を問わずライカMLマウントレンズを紹介している。本家たるライカ製を筆頭に、昭和時代の日本製レンズ、ロシアレンズ、ツァイス、フォクトレンダー、そして昨今台頭してきた中国製レンズまで、様々なタイプのライカMLマウントレンズを豊富な作例とともに取り上げている。

本記事では、3章の「オールドライカレンズ L39マウント編」から、SUMMARIT 5cm F1.5(ズマリット)ついて解説する。

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ライカMLレンズ・ベストセレクション

クセ玉として人気沸騰中

シルバークロームのクラシカルな佇まいだ。

本レンズはバルナックライカ時代の大口径標準レンズだ。シュナイダーが手がけたクセノン5センチF1.5を改良した製品である。当時の標準レンズとしては突出して明るく、開放ではフレアやぐるぐるボケなど、収差がかなり出やすい。最近は手頃な価格で買えるクセ玉として人気だ。開放で柔らかく絞って硬く、というオールドレンズらしい特性も備える。1本にオールドレンズのおもしろさがギュッと詰まった標準レンズだ。

八角形のXOONSがズマリット用のフードだ。側面のネジでレンズに固定する。縮緬塗装で高級感がある。

 

15枚羽根の円形絞りを採用する。羽根の枚数が多く、絞った状態でも玉ボケがきれいな円になる。

 

フォーカシングレバーを押し込んで左に回すと、無限遠ロックした状態になる。

 

Leitz
L39 mount
Summarit 5cmF1.5
中古価格:50,000 ~ 100,000 円
1949年から1960年にかけて製造された大口径標準レンズ。レンズ構成は5群7枚のダブルガウス型だ。ライカMマウントの個体もある。

 

Data Leica M(Typ 240) + Summarit 5cmF1.5 絞り優先AE F5.6 1/2000秒 ISO200 AWB RAW 中間調重視の設計が功を奏し、天使の梯子と夕景のグラデーションをていねいに描いてくれた。

 

Data α7II + Summarit 5cmF1.5 絞り優先AE F2 1/640秒 ISO100 AWB RAW 開放近辺はフレアが出やすく、またシャープネスも柔らかい。ノスタルジックな描写が簡単に手に入る。

 

Data α7II + Summarit 5cmF1.5 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO100 AWB RAW 絞り込むと隅々まで緻密な描き方になる。ただし、現行レンズのような硬質な描写ではなく、あくまでも自然な鋭さで好感が持てる。

 

ライカMLレンズ・ベストセレクション

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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