ライカMLレンズ・ベストセレクション
第2回

オールドレンズ界のジキルとハイド LEICA Summilux-M 35mmF1.4

オールドレンズに興味を持つと、いつかライカレンズを使ってみたいと憧れを抱く人は多いだろう。特にズミクロン、ズミルックス、ノクティルックスなどのオールドライカレンズは、まさに憧れの的そのものだ。

写真家の澤村徹氏は「ライカMLレンズ・ベストセレクション」で、新旧を問わずライカMLマウントレンズを紹介している。本家たるライカ製を筆頭に、昭和時代の日本製レンズ、ロシアレンズ、ツァイス、フォクトレンダー、そして昨今台頭してきた中国製レンズまで、様々なタイプのライカMLマウントレンズを豊富な作例とともに取り上げている。

本記事では、2章の「オールドライカレンズ Mマウント編」から、Summilux-M 35mmF1.4(ズミルックス)ついて解説する。

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ライカMLレンズ・ベストセレクション

一度は試したい希代のクセ玉 Summilux-M 35mmF1.4

写真の個体は球面ズミルックスと呼ばれ、第2世代に相当する。第1世代はレア玉に属し、中古相場はかなり高額だ。

球面ズミルックスは、オールドライカレンズきってのクセ玉だ。開放では合焦部が霧をまとうように滲み、1~2段絞る
と研ぎ澄まされたシャープネスを見せる。開放と絞った時の豹変ぶりから、オールドレンズ界のジキルとハイドと呼ばれることもしばしばだ。発売当初は開放描写が甘すぎると酷評されたが、時代の変遷とともにこのレンズの個性として再評価されていく。初心者でもオールドレンズらしさを体感しやすいレンズだ。

フードは12504を装着。分割式のフードで、中にフィルターVIIを組み込める。

 

フォーカシングレバーを装備。第2世代は無限遠ロックがない。

 

絞りリングにもレバーがあり、操作性を向上している。

 

Leica
Leica M mount
Summilux-M 35mmF1.4
中古価格:200,000 ~ 300,000 円
1961年に登場し、レンズ構成は5群7枚だ。一般に球面ズミルックスと呼ばれるタイプで、1990年以降、非球面タイプが登場する。

 

Data Leica M10 + Summilux-M 35mmF1.4 絞り優先AE F1.4 1/1000秒 ISO100 AWB RAW やさしく滲む様子は、控えめなソフトフォーカスと言ったところか。反面、合焦した部分の切れ味は鋭い。

 

Leica M10 + Summilux-M 35mmF1.4 絞り優先AE F1.4 1/4000秒 ISO100 AWB RAW 開放で遠景の旧市街地にピントを合わせる。前ボケと滲みが合わさり、このレンズでしか撮れない世界観を描く。

 

α7II + Summilux-M 35mmF1.4 絞り優先AE F5.6 1/1250秒 ISO100 AWB RAW F5.6まで絞って遠景撮影した。開放と打って変わり、コントラストの強い硬派な描き方になる。このギャップがこのレンズの魅力だ。

 

ライカMLレンズ・ベストセレクション

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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