「考えるような被写体はいらない。絵になる絶景もいらない。決定的瞬間もいらない。何か気になるのがアート写真。ありふれた町風景もアート写真」写真家の丹野清志氏は、著書「町撮りアート写真ブック」で、町で見つけたものを、思いつくままに写真を撮って楽しむことを勧めています。
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「町撮り」とは、ずばり町を撮ること。
では、町の何を撮るのかということになりますね。観光旅行だとその町らしいとされるおすすめ撮影スポットとなるのでしょうがアート写真は町を紹介する観光写真ではないので、よく知られた町や場所にはこだわらない。どちらかといえば知られていないところを歩くほうが面白い。先入観を持たずに町を見ることができるからです。
本書の題は「町撮り」ですが、町、街、まち、マチ、都市、タウン、シティ・・・と文字の違いでイメージが変わるように、町の解釈は撮る人と町とのかかわり方によって違ってきます。
同じ町を10人が歩いたら、10人のカメラの目がとらえた異なる町写真があらわれることになります。
市街地の繁華街は町撮り舞台の主役ですが、町はずれのほど良い寂れかげんの風景がまたいいのです。さらに町の周縁を歩くとなぜか奇妙なモノや不思議な風景との出会いがあり、嬉しくなります。いずれにしても、町撮り写真の被写体は「町」というにあるものすべてなのです。
テーマを設定して、撮る目的をしっかり決めて歩く人もいるでしょうが、私などはとりあえず町へ出てとりとめもなく歩きまわって、気になったものを撮っている。
そんなふらふら歩きで何を撮るのですか。
そう問われたら、きちんと町撮りについて説明しなければいけないのでしょうが、なんだかおもしろそうなものがあるよ、という興味でカメラを向けているのでスッと答えが出てこない。
歩いて見つけます。私はそれでいいんじゃないかと思っているのです。
ここはこう撮らねばならぬと頭ン中で考えながらカメラ構えてたら、頭痛をおこしちゃう。思い込みが強すぎるとああだこうだと作画を考えすぎて、いい写真を見逃しまうものです。撮りたいと思ったら撮る。それでいいのです。
これは私の口癖ですが、写真はすべて気づきから始まります。肉眼では何の変哲もないものに見えているものが、レンズを通うすと不思議な世界があらわれる。それが気づきです。その瞬間、被写体への興味がアート写真の素材に変わるのです。
丹野清志の町撮り写真ギャラリー
<玄光社の本>