和の幻想世界の描き方
第10回

全体の色味を調整して雰囲気を変える

和風ファンタジーの世界観は、アニメやゲームなどで人気のある類型の一つです。わたしたちが歴史の中で垣間見る過去の日本とは似て非なる日常生活の様相には、その世界でこれから繰り広げられる物語への期待を掻き立てる魅力があります。

和の幻想世界の描き方」では、イラストレーター七原しえさんが、イラストの背景にある設定のほかアイデアを発想するコツ、イラストに仕上げるまでの制作手順を詳細に解説。世界観の設定からイラストレーションを起こす技術を身につけられる一冊となっています。

本記事では第1章「春霞」のイラスト制作の工程に関して、具体的な手順を抜粋して紹介します。

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和の幻想世界の描き方

メイキング解説

7. 背後木

ブラッシュアップ
次に背後のラフの木を完成稿用にブラッシュアップします。向かって右下の幹の筋が途切れたり不自然な部分があるので、加筆しながら全体を整えます。最後に影とオーバーレイを整えて完成です。

6. 傘

1. ブラッシュアップ
傘のてっぺんの花アクセサリーは背後木-人物セットの間にフォルダを作成し、加筆します。手前木-人物間、背後木の後ろにも新規でリボンを描き込み、木と木にもたれている人物を中心にリボンが前後し、風になびいたり木に絡まっている様子を出します。リボンとリボンが重なる部分、木の陰になる部分に影を追加しておくと、より立体感が出ます。

2. 細部追加

2. エフェクト

1. 背景と手前エフェクト表示
ラフで作成した背景、手前の花吹雪を表示させます。人物や木の配置と背後の花の配置がおかしくないか、花吹雪が人物顔など重要な部分を隠していないかチェックします。問題があるようでしたら位置を調整するなどして整えて下さい。

2. 明るさの最終調整
桜の木の枝・幹の黒さが若干目立ち、人物が背景から浮いているように思われたので、オーバーレイレイヤーを作成し、光が当たる場所を中心にエアブラシで明るさを追加しました。全体の色調に先ほどよりも一体感が出たかと思います。

3. 雰囲気を決める
ほとんど完成に近い状態ですが、ここから大幅にイラストの雰囲気を変えることもできます。

1: 背景と花吹雪以外に乗算レイヤーを加えて寒色系の暗さをプラス、背景の明るさを強調。
2: 暖色系の暗さを乗算でプラス、人物-背景の隙間に同系色でオーバーレイを加筆。背後からの光に暖かみを出す。
3: 1と2の中間。個人的には好みの暗さですが、コンシューマーゲームやTCGには暗すぎてあまり向いていないかもしれません。
4: 1に寒色系オーバーレイを追加。華やかさよりも神秘性を出したい時など。

1. テクスチャ

1. 和紙加工
Photoshopで自作した和紙風素材をテクスチャに使用します。オーバーレイでレイヤー構成の一番上に乗せてみて、あとは自分の気に入るカラー・濃度になるまで不透明度や色調補正で調整します。

2. 最終調整
最後に手前花吹雪を描き込んだレイヤーを複製。下になったレイヤーの境界効果をオフにした後、フィルタの「ガウスぼかし」で輪郭をぼかすと、上の花弁の周囲が発光しているように見えます。


和の幻想世界の描き方

著者プロフィール

七原しえ

七原しえ
青森県出身・在住イラストレーター。
商業・オリジナルイラスト共に和風・和柄イラストをメインに制作。日本的なイラストを現代風にアレンジした豪華で細密、幻想的な絵柄に定評がある。TCG、ソーシャルゲームイラスト、書籍装画を中心に国内外で活動中。主な経歴として、ポケモンカードイラスト(株式会社クリーチャーズ)、ONE PIECEカードゲーム(株式会社バンダイ)、英傑大戦(株式会社セガ)、FGO 概念礼装(株式会社ラセングル)、マジック:ザ・ギャザリング日本画・浮世絵土地(Wizards of the Coast LLC,)、戦国無双5(株式会社コーエーテクモゲームス)、週刊少年ジャンプ『逃げ上手の若君/松井優征』(集英社)カラーイラスト背景、その他TRPG、ホラー小説、ファンタジー小説を中心とした書籍装画多数。
オリジナル画集『緋花 根の国底の果て 七原しえ画集』(KADOKAWA刊)

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