和風ファンタジーの世界観は、アニメやゲームなどで人気のある類型の一つです。わたしたちが歴史の中で垣間見る過去の日本とは似て非なる日常生活の様相には、その世界でこれから繰り広げられる物語への期待を掻き立てる魅力があります。
「和の幻想世界の描き方」では、イラストレーター七原しえさんが、イラストの背景にある設定のほかアイデアを発想するコツ、イラストに仕上げるまでの制作手順を詳細に解説。世界観の設定からイラストレーションを起こす技術を身につけられる一冊となっています。
本記事では第1章「春霞」のイラスト制作工程に関して、具体的な手順を抜粋して紹介します。
メイキング解説
5. 明るさを調整する
ラフで制作した明暗調整用乗算レイヤーと細部影用乗算レイヤー、明るさを加えるオーバーレイレイヤーをラフと同じようにセットしてフォルダにクリッピングします。ラフで使用した時と同じ色・ブラシを使用し光や影の形を整えていきます。
6. 影・光のブラッシュアップ
細部影
細部影用乗算レイヤーには服や髪など細部の細かい影を描き込んでいます。ラフではざっくりと塗っただけだったのでここでしっかり形を整えておきます。レイヤーには、水彩画のような筆の輪郭跡が残る境界効果『水彩境界』を設定しています。必要であれば同じ設定の乗算レイヤーを新しく追加し、影の濃い部分などの塗り足しなどを更に行います。
オーバーレイ
ラフのオーバーレイをブラッシュアップしました。裾のフリルは見どころの1つなので、光が当たった時のひだや細かいシワを丁寧に描き込みました。
7. 加筆・細部模様入れ
帯と袖の蝶模様を描き込みます。模様を1枚のレイヤーにベタ塗りで直接描いても良いのですが、途中で色の組み合わせや濃度を細部ごとに調整しながら塗りたかったので「人物着彩フォルダ」内に模様用フォルダを作成してベースにクリッピングしました。ここに『蝶の目玉模様水色』『羽の水玉模様黄色』など同じ模様ごとにレイヤー分けしながら蝶模様を描き込んでいきます。同じようにして帯の蝶模様も全て塗り終わったら、フォルダは統合して1つのレイヤーにまとめておきます。
3. 手前の木
ブラッシュアップ
桜の幹に使用したブラシはところどころ背後が透けて見えるため、木の形を整えた後に下地用の新規レイヤーを作成。人物などが透けないように線の色で下地を塗ります。
細かい枝を更に加筆し、桜の花もブラッシュアップします。細かい枝の先につぼみを加え、花もかたまり(ぼんぼりのように枝に密集する部分)を意識して形を整えると自然でボリュームのある満開の桜になります。
最後に木の影・オーバーレイをラフからコピペし、形を整えて完成です。