創作の中で「キャラクターの装い」や「天候」が変わることは、しばしばキャラクターの感情や状況、キャラクター同士の関係性や環境などの変化を表現する手段の一つとして使われます。特に「雨に降られてずぶ濡れになる」などは、同じキャラクターでありながらも、髪型や服装が変化することで、いつもとは違った雰囲気を出すことができることからよく使われる表現です。
「女の子の濡れ透け表現テクニック」では、水に濡れた肌や服の質感表現テクニックを中心として、5つのシーンにおける女性キャラクターの「濡れ感」描写を解説。顔や体の各パーツから服を着ているときの濡れ透け表現、水滴の質感や海辺など水のある景色の描き方まで、キャラクターの濡れ透け表現に必要な要素を網羅して説明しています。
現代では艶めくような色気のある男女を「水も滴る」と形容することもありますが、本書では特に女性キャラクターの濡れ透けに絞って表現する手法を紹介します。
本記事では第2章「失恋でたたずむ雨空のバス停」より、失恋した少女が雨に打たれる様子を描いたイラストの解説を3回に分けて解説します。今回はその1回目。
失恋で溢れた涙と雨が入り混じる……
雨を受け入れ濡れた姿が結果を映し出す
生まれてはじめてできた好きな人に思い切って自分の想いをぶつけた。だが、その初恋は実ることはなく、とぼとぼと歩く帰り道、バスを待つバス停で突然の雨が。かまうこともなく、少女の衣服は濡れ、雨混じりの涙が頬を伝った……。
コンセプト
恋が実らなかったという失恋を経験した少女の感情を、頬を伝う涙と突然の雨のイラストでリアルに表現している。
情景
帰りの通学路で突然の夕立に襲われて、梅雨の雨風が体に冷たく刺さる。雨風の強さに失恋の痛みがさらに増す。
キャラ
性格は、おとなしくも恋心に溢れる乙女。一般的な十代の体型だが、童顔なことが悩みのひとつである。
濡れ度合い
雨に降りられて制服やカバンはびしょ濡れ。制服から透ける下着や肌の張りつき感がびしょ濡れ具合を物語る。
01. ラフでアイデアを固める
01-1. 大まかな構図を作る
構図を想像しながら何パターンか描き出し、イメージを構築していく。
大雑把なイメージを描く
今回の設定は、好きな男の子への失恋で、場所は通学路の途中のバス停であるので、アングル、構図をイメージしながら描き進めていく。描いていく中で、構図を徐々に納得いく形へ落とし込む。構図がある程度決まったところで、持ち物や背景などの必要な要素の場所を設定する。
背景の濡れの構図を意識する
イラストのイメージを作る中で、背景のどの部分に濡れを入れるかを考えながら作る。背景に使う草木やバス停の看板の濡れも考慮しながらイメージを固めていくことが、必要になってくる。
01-2. ラフを作る
イメージが固まったら、ラフをどんどん描き進めていく。
まずは主人公の体全体の輪郭を描いていく。このとき、顔の部分だけは他よりも細かくラフを描く。
輪郭が決まったら、制服や持ち物であるカバンなどのラフを描き、背景の場所にも線を入れていく。
描いているラフに濡れ透けの部分を意識しながら、更に細かく線を入れていきラフを固める。
ラフが完成したら、背景の位置に影を付けたり、「バス停」や「木」の位置に目印をつける。
02. 線画・下塗りをする
02-1. キャラの線画を描く
ラフが完成したら、線画でイラストを清書していく。
1. 顔周りを描く
はじめに主人公の髪の毛から清書に入り、毛先や髪の流れ方、濡れ感などを意識しながら、描き進めていく。
2. ラフ以外の箇所を描く
顔周りを清書していく中で、ラフをもとに描き進めるが、ときどきラフを無視して線画を描くこともある。
キャラクター演出:顔全体のバランスを整える
キャラクターを描いていく中で、ラフを背景に敷きながら線画を描くが、バランスを整えるために、ラフを一度非表示にして、全体を調整していくことで、納得のいった完成度の高いイラストにすることができる。
3. 胴体を描く
ラフでぼんやりしていた体のディティール部分を参考にしている画像などを確認しながら、線画を引いていく。
スカート部分やスクールバッグの紐の部分など気になる箇所は随時修正をしていきながら、清書を進める。
4. 全身の清書が出来たら完成
全体のバランスを見て追加で線画を引いたり、背景の一部分にも線画を入れるなどして、キャラクター部分の清書はこれでひとまず完成にして次に進む。
目を伝う涙は重要なため、この清書段階で描いておく。
02-2. 下塗りでイメージを作る
本塗り前に下塗りをして、色味のイメージを整えていく。
1. 髪の毛
下塗りでは基本的にひたすら「バケツ」で色を入れていき、イラストを作っていく。線画と同様、下塗りも髪の毛から塗り始めていく。
気になった線画はここでも随時修正する。
2. 空き部分をGペンで詰める
他の箇所をバケツで塗ってしまわないように、空いている部分を「Gペン」で目的箇所を埋めていく。
前部分できっちりとGペンで空き部分を埋めたことで、目的箇所の下塗りができる。
腕を上げたときや制服をまくっている部分の裏地、襟の部分の下塗りは色をあえて変えておく。
3. レイヤーを分けて塗る
同じ色を使用する部分でも後々の塗りやすさを考えながら、レイヤーを分けて塗っていくことで、着色に入ったときに塗りやすくなる。
細部にもこだわって下塗りする。
4. 顔部分を塗る
髪の毛以外の下塗りはラストにもってきて、まつ毛や涙部分などを調整しながら下塗りをしていく。
髪の後ろ部分も下塗りしておく。
5. ひと通り塗って完成
全身の下塗りを終えたら、手前の背景部分にも下塗りを入れてここで下塗りは終了。
後で変更することになるが、一旦想定している色味に大雑把に近づけておく。
ここではまだ濡れの部分などは入れずに下塗りをしている。