カラーイラストの完成度を向上させるために必要な技術や知識は多岐にわたります。一例を挙げれば、色の成り立ちから相性、配色、陰影、質感などなど。「キャラクターの色の塗り方 新装版」著者のkyachiさんは、個々の情報を整理し、それらが自分の目指す表現にどのような形で役立つのかを把握する作業こそが「人に見せるイラスト」を完成させる秘訣だと語ります。
2014年に出版した技法書の新装版となる本書では、人物を描いたカラーイラストのクオリティアップに必要な知識や技術を様々な要素に分けて解説しています。色の基礎知識や光と影の表現、キャラクターの個性を引き立てる配色などのほか、実践的な塗りの手法として「アニメ塗り」「テクスチャ塗り」「厚塗り」「レイヤーマスク塗り」の4種類を新たに収録。現行バージョン(2021年時点)の「CLIP STUDIO PAINT PRO」および「Photoshop」の機能を踏まえた作画方法を学ぶことができます。
本記事では、Chapter2 Lesson2「物質の質感」より、質感描写の例を抜粋して紹介します。
物質の質感
ゴツゴツとした岩やツルッとしたプラスチックなど物質の質感を描く際に重要なのが、光と影の使い方です。いろいろな物質の表現を見ていきましょう。
質感の表現のカギとなる光と影の使い方
表面の凹凸や透け感など、物の質感を表現するには色だけでなく光と影が重要です。
石こう(石膏)
石こうは白ですがツヤがなくグレーがかって見えます。光が当たる部分は白くなります。
石・岩
彩度と明度の低い青緑で岩の質感を表現しました。ゴツゴツしているため反射の明度差が激しいのが特徴です。
金属
表面が平らで光をよく反射するのが特徴です。反射の部分は彩度を低めにして表現しています。
木
木は温かみのある暖色で。明度差をはっきりさせて凹凸を表現します。白っぽい色にすると軽い木に見えます。
不透明なプラスチック
不透明なプラスチックは表面がなめらかで光を反射するのが特徴です。それ自体がつくる影も反射しています。
透明なプラスチック
透明なプラスチックは辺がすべて透けて見えるのが特徴です。厚みがあるほど色は濃くなります。
水の表現・屈折
水の中に物体を入れた場合、空気中とは違った見え方になります。空気中から水中へ物体を差し込むと、水面で屈折して見えますので注意しましょう。
水中から水面を見る
光が当たっている部分と、そこに影響されてやや明るくなっている部分の色の差をつけましょう。
質感の表現のカギとなる光と影の使い方
キャラクターの表現では、さまざまな物質をポイントに使うことがあります。作品を例に物質による光と影の描き方を見てみましょう。
- 角は筋状の影を入れることでゴツゴツとした質感を表現しています。固い角は、光の当たり方で立体感を出しています。
- 羽が透けている感じを出すため、光を透過して羽の色が地面に映っています。
- 丸い球状のぶどうには丸くピンポイントで白いハイライトが入ります。葉はぼんやりと広がった薄いハイライトになります。