カラーイラストの完成度を向上させるために必要な技術や知識は多岐にわたります。一例を挙げれば、色の成り立ちから相性、配色、陰影、質感などなど。「キャラクターの色の塗り方 新装版」著者のkyachiさんは、個々の情報を整理し、それらが自分の目指す表現にどのような形で役立つのかを把握する作業こそが「人に見せるイラスト」を完成させる秘訣だと語ります。
2014年に出版した技法書の新装版となる本書では、人物を描いたカラーイラストのクオリティアップに必要な知識や技術を様々な要素に分けて解説しています。色の基礎知識や光と影の表現、キャラクターの個性を引き立てる配色などのほか、実践的な塗りの手法として「アニメ塗り」「テクスチャ塗り」「厚塗り」「レイヤーマスク塗り」の4種類を新たに収録。現行バージョン(2021年時点)の「CLIP STUDIO PAINT PRO」および「Photoshop」の機能を踏まえた作画方法を学ぶことができます。
「キャラクターイラストに限らず、イラストという自分以外の誰かに情報を伝えるための絵を描くには、ありとあらゆる絵に関する情報を知り、自分に向いているもの、目指したいものを精査し、整理することが必要不可欠です。(中略)より早く作品を制作したいがために、はじめから手っ取り早く効率よく描くことを目指す方が多くいると思いますが、効率を良くするには、まず自分ができること、できないこと、知らないこと、知っていることを分類して整理し、わかりやすく自覚することが大切なのです」(「はじめに」より引用)
本記事では、Chapter1 Lesson4「色の心理作用」より、人が色からイメージする印象についての解説を抜粋して紹介します。
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色の心理作用
「赤は暖かい」「青は寒い」など、色は人の心理にさまざまな影響を与えます。目指す表現に合わせて色を選びましょう。
基本の色のイメージ
色から受ける印象は人によって少しずつ違いますが、多くの人に共通する基本のイメージがあります。
赤色
太陽、火、血液、情熱、危険、興奮など、もっとも印象的で色彩を感じさせる色。
橙色
夕焼け、昼、元気さ、にぎやかさなど、温もりと活力を感じさせる、赤と黄の中間色。
黄色
光、月、金、希望、快活など、有彩色の中で一番明るく、注意喚起にも使われる色。
緑色
木、森、山、植物、健康、平静、癒しなど、自然や安心感、調和を表す中性色。
青色
空、海、水、冷たさ、爽やかさ、透明感など、知性的で神秘的な好感度の高い色。
紫色
神秘、不吉など得体のしれない不思議さを表し、古くから高貴さの象徴とされてきた色。
白色
雲、雪、純粋、神聖、信頼感や清潔感など、光を反射するもっとも明るい無彩色。
灰色
冬、石、無機質など、他色との協調性が高く、控えめな上品さを持つ調和の色。
黒色
墨、闇、死、恐怖など、全色を吸収して遮断し、潜在的に負のイメージが強い色。
色によるイメージ
温度、重さ、感情、季節など色は人の心理を大きく左右します。
温度
赤やオレンジ、黄など暑そうに感じる色を「暖色」、青や緑など寒そうに感じる色を「寒色」といいます。
重さ
明度が高いと軽い印象で、低いと重厚感が出やすいです。
感情
暖色系で彩度の高い色は興奮を高め、寒色系で彩度の低い色は冷静になりやすい傾向があります。
印象
彩度が高く鮮やかで明度が低い色は派手、彩度が低くグレーや黒がかった色は地味な印象を与えます。
文化と色のイメージ
私たちは自由に色を選ぶことができます。しかし、どの色を選ぶかということには、その地域の文化が強く影響しているのです。イラストはフランスの伝統色(左)と日本の伝統色(右)を表したものです。歴史や風土がその国らしい色使いを決めます。このように、色でキャラクターの国籍や生きている時代を描き分けることも可能なのです。