玄光社は、「TOKYO TRIBE」シリーズや「隣人13号」などの作品で知られる漫画家・井上三太さんの漫画家デビュー30周年を記念した画集「SARU」を発売しました。漫画家、イラストレーターとしてだけでなく、自身が立ち上げたファッションブランドの経営者兼デザイナー、DJとしても活躍する井上氏がこれまでに手がけた仕事を、各作品の名場面や象徴的なビジュアルとともに収録しています。
海外誌で連載中の新作に加え、アイデアを記録した秘蔵のスケッチや音楽作品のアートワーク、フィギュアをはじめとしたオリジナルグッズ、LINEスタンプなど漫画以外の作品も充実。同じく漫画家で従兄弟の関係にある松本大洋さんとの対談も収録しています。全384ページにわたって展開される、井上三太の世界観を存分に楽しめる一冊です。
本記事では、1990年代から2010年代前半にかけて連載されていた「TOKYO TRIBE」シリーズ1~3の解説とビジュアルを抜粋して掲載します。
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TOKYO TRIBE
架空の都市ト一キョ一を舞台にシヴヤSARUとシンヂュクHANDSという二つのトライブが抗争するバイオレンスアクションの傑作。チーマー、ストリートギャングと呼ばれていた集団にトライブという名前を付け、当時の若者のカルチャーを細かくブレンドし、誰も描いた事のない独特の世界観を生み出したエポックメイキングな作品でもある。”トーキョー”という東京であって東京ではない都市、トライブやSARUといった、以降の井上の作品を語るうえで欠かせないキーワードが多数登場している。
1993年に描き下ろし単行本としてJICC出版から発売され、じわじわと高い評価を得て浸透。美術出版社版、集英社版の復刻を経て現在はサン夕スティック・エンターテインメントから発売されている。全1巻。
TOKYO TRIBE2
かつて親友だった海とメラは、ある行き違いが元でそれぞれムサシノSARU、ブクロWU-RONZというトライブの一員として対立する立場になってしまう。そこに政治的な思惑やトーキョー中のトライブが絡み合い、大きな戦争が勃発。果たして二人は昔のような親友に戻れるのか?
「TOKYO TRIBE」にて鮮烈な印象を残した トライブという設定をさらに推し進めて、各地で読者たちが現実にトライブを作ってしまうほどの大ヒットとなった本作は、登場人物たちのHIPHOPファッションが当時の流⾏をあおってストリー卜のバイブル的存在とも言われた。
1997年から2005年までファッション誌「Boon」で連載され単行本は番外編1冊を含めて全13巻。2006年にはマッドハウス製作、佐藤竜雄監督によって全13話でア二メ化された。またメディコム・トイから発売されたフィギュアは海を超えて人気を博し、世界中にファンを作るきっかけとなった。アーティストやミュージシャンにファンも多い。
TOKYO TRIBE3
「TOKYO TRIBE2」の抗争から数年後の、復活したシヴャSARUの新しい戦争を描いた最新作。
トーキョー内でのトライブ間抗争はすっかり落ち着いていたが、ヨコハマWESTを代表するラッパーHUGEが謎の銃弾に倒れた結果、SARUとWESTに新たな緊張関係が生まれてしまう。さらには銃の乱射でSARUに犠牲者が出る大事に発展。ラッパーを目指す岬港はHUGE襲撃の濡れ衣を着せられたまま、そのHUGEの妹ナイナと恋に落ちるが、様々な状況と環境が二人を裂いてしまう。三太版ロミオとジュリエツト。
また、ここまでラッパーたちのライムに本格的にこだわった作品は広い漫画界でもほかに見当たらなぃ。2008年よりファッション誌「Ollie」にて連載開始、5巻で完結した。
書籍ではこのほかにも、共通の世界観を持つスピンオフ作品「TOKYO GRAFFITI」、「TOKYO TRIBE WARU」、「TOKYO BURGER」などを掲載しています。