トミーのコンセプトアート教室 マンガと添削で楽しく学べる!
第2回

受け手に「何を伝えたいのか」「どうなってほしいか」をはっきりさせる

人の頭の中にある概念や構想、いわゆる「コンセプト」を他者に伝えようとするとき、絵の力は強力に作用します。遠い将来や、開発前の製品など、具体的な像が定まらない目標に向かうことはとかく困難になりがちですが、「目的を達成した後の世界」を絵として具体化し、他者と同じイメージを共有することで、一つの完成形や目標に向かって、迷いなく進むことができるようになるのです。

トミーのコンセプトアート教室 マンガと添削で楽しく学べる!」では、コンセプトアーティストの富安健一郎さんが、コンセプトアートの考え方と始め方、上手なコンセプトアートの描き方を、佐倉おりこさんのマンガとともに詳しく、かつ、わかりやすく解説しています。

後半では、事前に公募したコンセプトアートの添削や、富安さん自身によるコンセプトアートの制作手順も紹介。初めてコンセプトアートを描こうと考えている人にも実用性の高い内容となっています。

本記事では、PART1「コンセプトアートを知ろう」より、コンセプトアートを描く上で重要な「考え方」についての解説を紹介します。

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コンセプトアートの考え方

Q. コンセプトアートの基本的な考え方はどんなものでしょうか?

その絵を見た人、もしくはでき上がった作品を見たり使ったりした人に、どうなってほしいかを考えることです。そうするとコンセプトがはっきりして、コンセプトアートに落とし込むことができます。

たとえば本書を読んだ人が、読み終わった後にどうなってほしいのかを考えてみますね。本を読んですぐにチラシの裏などに、こういうデザイン面白いなとか、思ったことを絵にしてみようとか、何か描き始めてくれたら嬉しいですよね。

あるいは、この本を読んでお風呂ででも想像を広げてくれて、次の日それを友だちに話して盛り上がって、映像作品を作ってみよう、なんてなってくれたら楽しいな、など。

そういうことをイメージしていくと、何をすればいいかが明確になってくるんですよね。たとえば人の作品を見て刺激を受けてもらえるようにしたり、どんな考え方をすれば良いのかを伝えていったり。これがコンセプトです。

ゲーム作りの場合でも一緒です。ただいいゲームや面白いゲームを作ろうとか、そういう動機だけだと、すごく曖昧なものになってしまうか、そもそも制作途中で頓挫してしまうこともあるかもしれません。だから、これって誰に何を伝えたくて作っているんだろう?どうなってほしいんだろう?と考えてコンセプトをはっきりさせていきます。

それを絵で表したら、コンセプトアートになるというわけです。

マンガ:佐倉おりこ

Q. コンセプトはなぜそこまで重要なのでしょうか?

コンセプト次第で、行動が変わるからです。行動が変わるということは、結果も変わります。

たとえば僕が高校生で、運動部に所属しているとしますね。この時コンセプトがないと、ただ頑張って練習して、家に帰って寝るだけの生活になります。しかし自分が部活を行うことにコンセプトを設定してみると変わります。先輩と仲良くなることがコンセプトなら、積極的に話にいくようになるでしょう。筋力を上げることがコンセプトなら、筋トレに励むでしょう。インターハイに出たいなら、練習量を増やすでしょう。それぞれコンセプトによって行動が変わりますよね。そうすると、同じ部活に所属をするということでも、結果が変わってきます。これが、コンセプトが重要な理由です。

Q. コンセプトアートのアイデアを出すためのテクニックはありますか?

一例なのですが、検索のテクニックがあります。”宇宙船を描くときに、「宇宙船」と検索するのはよくない”というものです。

というのも、宇宙船を描いてくれと言われた時に、宇宙船を検索してしまったら、見たことのあるありきたりな宇宙船のデザインになっちゃうんですよ。それって依頼者が求めているデザインではないですよね。

でも、宇宙船が一体どのような役割を持つのか、何を伝えたい存在なのかを考えて、そこからキーワードを連想して検索してみると、新しいアイデアにつなげたり、広げたりすることができるんです。

たとえばパーティーが大好きなアンドロメダ星雲のリーダーが乗っている宇宙船と、銀河のはずれの凶悪犯罪者がいる星から犯罪者を乗せて航行する護送船では、検索するものが変わってきますよね。

パーティー大好き星人の宇宙船を描くなら、クラッカーとかケーキとか、楽しいものを検索します。犯罪者の護送船なら、拘束具とか拷問で使う道具とか、怖いものを検索します。そこから発想を広げてアイデアを出していけば、自ずとそれぞれ違う宇宙船になりますよね。当たり前のように見えて、とても重要なテクニックです。

実際、仕事のオーダーでは、「見たことのない宇宙船を描いてくれ」なんて言われることがほとんどですしね(笑)。


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