色気のある男の描き方
第7回

肉体美と生き様で魅せる「格闘系」男性キャラクターの描き方

イラストレーションにおいて、男性キャラクターの美しさ、かっこよさ、セクシーさを表現するポイントは、骨格や筋肉の付き方、仕草、ファッションなど様々な点で女性と異なります。物語においては、線の細い美少年から筋肉質な格闘家、年齢を重ねた中高年男性など、人生のステージや立場によって、採用されやすい男性キャラクターの類型がいくつかあります。

色気のある男の描き方」では、「男性の色気」という抽象的で感覚的な概念をイラストとして表現するためのテクニックを紹介。男性の体の構造と女性との主な違い、男性らしい体つきのバランス、顔と体の各パーツや動きのあるポーズの描き方をはじめ、「美形男子」「ハードボイルド」「格闘系」「ナイスミドル」といった類型ごとの描き分け方までカバーしています。

本記事では、CHAPTER3「キャラ別の色気表現」より、戦う男性キャラクターを描く際のコツを抜粋して紹介します。

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色気のある男の描き方

格闘系の男の魅力は、戦いの中で繰り広げられる、ストイックに鍛えられた体と心の動き。とくに戦いの中で躍動的な肉体を描くことで、キャラクターの男らしい魅力を引き出すことができます。

鍛錬された肉体と生き様を描くポイント

格闘系キャラの特徴
格闘系キャラの魅力は男らしい生き様と鍛え抜かれた肉体美にあります。強い心には強い肉体が必要で、肉体の力強さや躍動感があってこそ、主人公たちの心身の強靭さに説得力を持たせることができるのです。

ポイント1:髪型
髪型は短髪から長髪までさまざまですが、手がかからないスタイルにすることがポイント。美形男子と違い、ヘアスタイルを意識するキャラは格闘系の登場人物にはふさわしいとはいえません。ただし敵キャラなどで、ナルシストなキャラであればOKです。

ポイント2:顔と表情
やや甘味を残しつつ、凛々しい顔に。敵キャラほど、甘味がなくなり厳しい表情に仕上げます。一般的に、日本の漫画やアニメでは、主人公などはさわやか系が多いため、髭はほとんどありませんが、その対照として、敵キャラには多く見られます。

ポイント3:筋肉
鍛えられることでどのように変化するのか、人体のしくみを学び、絵に活かすことが大事。とくに格闘中においては、いかに筋肉の動きをリアルに描くことができるかで、絵の臨場感に大きな違いが生まれます。

ポイント4:バトルシーン
武器や素手による格闘シーンでは、お互いの距離や構え方などが違ってきます。また、バトル中に受ける傷も切り傷や打撲傷などがあります。

闘う男の「髪型」選び

主人公キャラはさわやか系のストレートで、髪にあまり個性を出しません。一方、敵キャラなどは長髪やモヒカン、スキンヘッドなど個性的な髪型を設定します。

ノーマル
主人公キャラは短めのストレートな髪型が一般的。手をかけすぎない、不潔感がない無難な印象です。髪に特徴を出しすぎると、他のキャラとの髪型の使い分け、キャラの立て方が難しくなります。

ロング
敵キャラや味方のサブキャラに多く見られるストレートロング。優しさや神経質な印象を与えます。

「顔と表情」は力強く

格闘系男性の顔は、力強い肉体に見合う顔の作りとその表情。一般的に強い視線、太めの眉、通った鼻筋、引き締まった口元が基本になります。性格や年齢に応じて辛味や甘味を加え、戦闘中の表情に大きな変化を付けることで、臨場感溢れる表情を作り上げることができます。

主人公系
力強さと冷静さを感じさせる表情が基本です。しっかりとした輪郭に太めの上がり眉、通った鼻筋、引き締まった口元に、鋭く冷静な目を意識して描きましょう。

  • 太めでくっきりとした眉は、眉間にシワを寄せた状態に近く、眉頭から眉尻に向けて平行および上方に描きます。眉尻は下げてもいいですが、全体的に上がり眉にします
  • 鼻筋はくっきり、口元は引き締まった状態にします。口角を下げると、表情に緊張感が生まれます。口角を上げると、笑っているように見えますので注意しましょう
  • 高く存在感のある鼻をはじめ、力強く輪郭を描きます。格闘時などで力を入れる場合、奥歯を噛みしめるため、格闘家は顎が発達しています

怒り
テンションが上がり怒声を上げるシーン。眉間周辺に力が入るため、大きなシワが寄ります。大きなポイントである強い目力を描くように心がけましょう。

浮き出た血管は、強い怒りの感情を表します。

歯を食いしばる
戦闘中に力が入ると奥歯を噛みしめる状況になります。結びつつ、両端が開く口元を描くことで、強く噛みしめた状態になります。

口元を開いて食いしばる歯を見せることで、全身に力を入れている状態を表現することができます。また、痛みや悔しさに耐える表情でも用いることができます。

格闘中の「筋肉」の動き

格闘系には、超人的な動きを見せるキャラも登場しますが、肉体は人間なので、体や筋肉の動きはほぼ同じ。人体の構造に則ってバトルシーンを描くことが大切で、筋肉の動きが不自然だと、絵そのものに違和感が生まれてしまいます。

前かがみ
前傾姿勢で両足が曲がり、足指にエネルギーが溜まっている状態です。

  • 斜め上からの視線でとらえているため、後ろの足のすねが見えず、太ももに足指が付いているように見えます
  • つま先立ちにすることで、素早く次の動作にうつることができます

MEMO:筋肉は伸び縮みできない!?
基本的に筋肉は縮むことしかできません。相反する動きを持つ筋肉と連動することで伸びるように見えるだけなのです。

たとえば、りんごを手でつかんで口元に運ぶとき、上腕二頭筋が縮み(屈筋)ますが、元の皿に戻す時は上腕三頭筋が縮み、上腕二頭筋は縮むのをやめる(この状態を伸筋といいます)だけなのです。つまり、二つの相反する筋肉が同時に縮んだり、伸びたりすることはありません。

「バトルシーン」の動き

バトルの流れを通して、接近戦の激しさやお互いにダメージを受けて描き加えられる傷、そして陥落。失望や悔しさなども戦いの後で描かれます。これら一連の流れを覚えると便利です。

打ち合い
前傾の姿勢になるため、腹部の筋肉は縮み、背中の筋肉は伸びた状態に見えます。腕の伸び縮みによる筋肉の変化に注意して描きましょう。

  • 前傾姿勢になることで、腹直筋をはじめ、体の前面の筋肉は縮んで見えます
  • 同じく前傾になると、背中の筋肉の膨らみはなくなり、伸びたように見えます

ダメージの表現

バトルシーンでは、お互いにダメージを受け、傷や腫れとなって表面化していきます。戦いの流れの中で、これらの傷や腫れを増やしていくことで物語が緊迫した流れとなっていきます。

鼻血/擦り傷
打ち合いの中で打撃を浴びると、打撲傷や打撲による鼻血が見られることがあります。序盤における打撲傷はかすれた程度で、小さな斜線などで影を作ります。

飛び散った鼻血は墨が付いたように顔に散らします。

刺し傷/切り傷
刃などによる刺し傷は、1点から湧き出るように血が噴き出て、血は滴り落ちます。切り傷の場合は、斬られてできた傷を線で描き、血は肌に沿って垂れ落ちるイメージになります。

刀の刃に流れ落ちる血のしずく。斬られても立ち向かう意志が垣間見られ、印象的なシーンになります。

格闘系キャラの性格と描き分け

格闘系では、時代背景をはじめ設定がさまざまで、現実では見かけない服装や武器を持ったり、異常な性格のキャラが登場します。キャラの性格や職業などによって体型や表情の特徴を描き分けましょう。

自然体
髪や服装をラフに、表情をやわらかくして体の力を抜いたナチュラルな状態にすることにより、キャラがおおらかな性格であることを連想させることができます。

  • 空を見上げ、口元を緩ませた笑みを浮かべた余裕のある表情。あえて緊迫した場面で用いることにより、敵には警戒を、味方には安心を与えることができます
  • 刀の持ち方でも人格や地位を印象付けられます

ボクサー
ボクサーはさまざまな時代や多くの国々を舞台にした物語で登場します。トランクスやグローブなど、時代やその場の雰囲気に合わせて描くようにします。

細かく直線のシワを入れることにより、薄くてハリのある生地の質感を表現できます。薄くてやわらかい生地の場合は、細かく曲線や波線を入れましょう。


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