イラストレーションにおいて、男性キャラクターの美しさ、かっこよさ、セクシーさを表現するポイントは、骨格や筋肉の付き方、仕草、ファッションなど様々な点で女性と異なります。物語においては、線の細い美少年から筋肉質な格闘家、年齢を重ねた中高年男性など、人生のステージや立場によって、採用されやすい男性キャラクターの類型がいくつかあります。
「色気のある男の描き方」では、「男性の色気」という抽象的で感覚的な概念をイラストとして表現するためのテクニックを紹介。男性の体の構造と女性との主な違い、男性らしい体つきのバランス、顔と体の各パーツや動きのあるポーズの描き方をはじめ、「美形男子」「ハードボイルド」「格闘系」「ナイスミドル」といった類型ごとの描き分け方までカバーしています。
本記事では、CHAPTER3「キャラ別の色気表現」より、若く美形な男性キャラクターを描く際のコツを抜粋して紹介します。
リアルさもありながら現実を超えた美しさが魅力の美形男子。少し足長にする、目を大きくするなどによって、より身近な憧れの対象としてのキャラクターを描くことができます。
顔だけではない美形男子の美のポイント
美形男子の特徴
美形男子という一つのキャラに仕上げる場合、顔はもちろん、スタイルや服装、小物に至るまでダサいと思われないことが最低の条件。そのため、流行を追いすぎるのは危険です。はやり廃りのサイクルが激しい現代だけに、最新流行に沿って描くと、翌年にはダサいと思われる可能性もあります。顔、髪型、ファッションをはじめ、オーソドックスなラインやデザインを基本に描くとよいでしょう。そのための5つの美形ポイントを紹介します。
ポイント1:髪型
基本はややボリュームが出る髪型で、ウェーブを付けると繊細でソフトな印象になります。若々しいソフトな印象を与えたいならゆるふわ系のマッシュなど、キャラの年齢に合わせてイメージに近い髪型を選びましょう。
ポイント2:顔と表情
顔は少女漫画風であれば、目や口は大きく、鼻はすっきり、面長で眉が細い中性的な印象。スポーツ漫画であれば濃い傾向で、眉は濃く、目鼻立ちがくっきりしています。
ポイント3:服装
服装は、流行を追いすぎず、カジュアルでオーソドックスなスタイルが無難。顔やスタイルがよければシンプルな服装にしたほうがかえって美しさが際立ちます。体に合ったサイズ、パンツの丈の長さなどは、ファッション誌を参考にして描きましょう。
ポイント4:仕草
袖から覗く腕や手の仕草に男の色気を感じる女性は多く、男性特有の手付きや仕草を取り入れることでより魅力的な絵に仕上がります。
ポイント5:足元
「オシャレは足元から」といわれるように、ファッショナブルな男性を描くのであれば、足元にこだわりを持って描きましょう。足についてはパンツのシルエットや靴選び、足首をどう見せるかがポイントになります。
美形な顔に合わせる「髪型」
近年、髪型はとても細分化しています。メインキャラはオーソドックス、サブキャラはより個性的な髪型やカラーにするなどで、各キャラクターを印象付けることも可能です。ここでは、美形男子系で見られる髪型をいくつか紹介します。
ソフトモヒカン
上へ毛先を立てた髪が特徴。サイドを刈り上げるとモヒカンになります。サブキャラに多く、快活な印象を受けます。金や赤や緑などに色塗りすることで、さらに個性が強調されます。
ゆるふわのショートミディアム
少女漫画などのメインキャラクターに多い髪型で、甘く、やさしい印象。毛先のハネで軽さを出しています。
美しくも男らしい「顔と表情」
美形男子を描くうえで、やはりキャラクターの顔の魅力を最大限に引き出すことが大切。「清潔感」「男らしさ」「美しさ」「かわいらしさ」などがポイントとなります。
かわいい系
弟系の美男子を描く場合、美形男子に「かわいい」「幼い」要素を足す必要があります。目や鼻、眉などの一部を変えるだけでもイメージが大きく変わりますが、全体的にフェミニン化(女性らしく)しすぎると、男性的な魅力が損なわれますので注意しましょう。
- 目を丸く大きく、眉を細くすると幼い印象になります。垂れ目にするとよりかわいい印象です
- 鼻は小さく描くことでかわいらしさが増します。鼻翼(びよく、小鼻のこと)を描かないのがコツです
- 輪郭を直線と鋭角なラインで構成すると、男性らしさが残ります。逆に曲線中心に描くと、子どもっぽく、女性っぽい印象になります
- 首を細くすると女性っぽくなりますが首筋のラインや喉仏を強調することで男らしさを残すことができます
エラと喉仏がポイント。ここを直線的に強調することで男性らしさが増します。逆にこのラインをなめらかにするとフェミニン化されます。
いろいろな表情を付けよう
美形男子の顔で喜怒哀楽を表現する時、笑顔はさわやかに描けるのですが、怒りや哀しみの表現は崩した顔を描かなくてはならないので注意が必要です。
怒り
怒りを覚えると眉間に力が入ってシワが発生します。眉頭(まゆがしら)が下がるとともに眉尻(まゆじり)が上がり、逆「ハの字」のような形状になります。また口元にも力が入り、「への字」型になる傾向です。
- 喜びが眉間の筋肉を開放して眉頭を押し上げるのに対し、怒りの場合は収縮によって眉間にシワが寄ります
- 口角を下げるだけで怒りを表すことができます
哀しみ
男性の哀しみをかっこよく描くポイントは、感情をぐっと押し殺すこと。女性や子どもの哀しみが放出される(声を出して泣く、感情をあらわにする)のに対し、感情を自制しようとする中で涙がこぼれても、時にはそれがかっこよく見えます。
- 感情を抑えようとするため、顔が俯き加減になったり、手や指も内向きになります
- 眉間にシワが寄り、目も閉じ気味になり、場合によっては涙を流すことも
- 口角も下がります。唇を一文字にするのではなく、端に空間を作ることで、唇の中心部により力が込められていることになり、強い怒りや哀しみを表すことができます
「服装」は清潔感が大切
服装や小物を描く場合、注意する点は三つ。一つ目は、服装や小物の合わせ方。ニつ目は、ラインの出し方とバランス。三つ目は、シワや小物の立体感の描き方。年齢や性格に合ったものを選び、不自然な着こなしに見えないように描きましょう。
スーツ
スーツは、美形男子の主要アイテム。さわやか系はすっきりとしたツーピース、まじめ系であれば、かっちりとしたスリーピース、チャラい系はイタリアンスーツなど、キャラに合ったものを選んで描きましょう。
- メガネは形や素材、デザインもさまざま。キャラクターのイメージに合わせてチョイスします
- オシャレの基本は、体にフィットした服装を選ぶこと。描くうえでも、肩、袖、裾などのフィットした感じに注意します
「仕草」による色気表現
女性がセクシーさを感じる男性の仕草に、たとえば「髪をかき上げる」「メガネの縁を指先で上げる」などがあります。指先の動きに知性ややさしさを感じるわけです。男性の”かっこよさ”を表現するのであれば、指と指先の動きをとらえるようにしましょう。
髪をかき上げる
男性の無骨な指や指先での自然な振る舞いを表現して、セクシーさを強調しましょう。ポイントは、無骨でありながら動きにしなやかさがあること。関節の曲がりや指先の向きなどにもこだわりを持って描きましょう。
- 美形男子をより魅力的に見せるには、髪の流れや毛先の描写にもこだわりたいです
- 顔を少し傾けて描くことで、表情もソフトな印象になります
メガネを押し上げる
メガネの縁に触れる仕草も女性が男性の色気を感じるシーンの一つ。まっすぐに伸びた無骨な中指、軽く握られた薬指や小指のバランスをうまくとらえて描くことがポイントです。