イラストレーションで人物を表現する際には、描き込むところや省略するところの取捨選択、デフォルメと写実のバランスを考える必要があるでしょう。とりわけ「美少女」のイラストを制作する場合は、デフォルメの中に写実的な要素を加えて描写することで、女性らしいセクシーさを表現できます。体の一部をあえて写実的に描写し、肉体の質感を表現するには、強調したい部位の「肌」をいかにリアルに塗り込むかがポイントです。
「美少女イラストのリアルな肌の塗り方」では、女性キャラクターの表現について「どこに注意したらリアルに見えるのか」を切り口とし、各パーツの描き方、そして塗り方を詳細に解説。体の各部位が持つ特徴を示しつつ、表情やポーズの作例も複数パターン用意しています。
本記事では、「2.頭部の塗り方」より、人物の表情を作る「唇」の表現方法についての記述を抜粋してご紹介します。
パーツ別塗り方のポイント
唇の塗り方を知ろう
唇は人間の感情を表現する大切なパーツです。目や眉などと一緒に形を変えることで様々な表情を作ることができます。複雑なだけに描き方が難しく塗り方次第で与える印象がガラッと変わるパーツです。
唇の基本を知る
唇は、歯の丸みに沿ってカーブを描いていて、中心にいくほど厚みが増し、口の端にいくにしたがい薄くなります。唇の形を考え、影が入る場所、入らない場所を見極めて塗っていきましょう。
- 上唇:上唇は下唇にかぶさるようにできています。
- 下唇:上唇の輪郭はきっちり描くのに対して下唇はぼかして塗るのがポイントです。下唇をハッキリ描いてしまうと化粧が濃い印象を与えてしまうので、上唇はぷっくり、下唇はフワッとした表現にします。
- 口の下の影:唇の下は少し凹んでいます。薄く影を入れることで立体感を出すことができます。
ワンポイント
キャラクターを上からの角度で描く場合は、下唇を強調して描き、下からの角度で描く場合は、上唇を強調して描くとバランスの取れた唇に仕上がります。
表情の違いによる唇の表現
唇は表情や感情によって、大きく形が変わるパーツです。それぞれの表情による唇の輪郭や口の下の影の入り方をよく観察しましょう。
微笑んだ唇
少し口を開けて微笑んだ唇は、ニヤツキ、嘲笑の他に誘惑などの表情にも使うことができます。唇の端をつり上げたりすると、より悪役の笑い方に近くなります。誘惑の表情にしたい場合は、ぷりっとしたハリのある描き方がオススメです。
「へ」の字の唇
不満、自信の表れであるこの唇は他の唇と異なり、描く際に口元の下からの角度を意識すると上手く描くことができます。また、口の下の影を強く入れることで、傲慢さを増すことができます。
悔しがる唇
悔しがる唇は、口の形状に注意して唇の輪郭を描くことが大切になります。この表情は、口の開き方を変えるだけで悲しみ、怒り、軽蔑などの表現にも使えるので便利です。
イメージの違う唇
同じ唇でも、描きたいキャラクターによって塗り方や形は異なります。多くの唇を覚えることでいきいきとしたキャラクターを描くことができるようになります。
大人の唇
オーソドックスな唇の塗り方です。唇の色味を変えることで、年齢の違いを表現できます。大人の女性や大学生などに向いています。
ナチュラルメイク・ノーメイクの唇
あえて唇を塗らず、口の下の影やハイライトなど最小限の描き込みで、健康的なイメージを与えることができます。運動する女の子や元気な女の子など、明るいイメージのキャラクターによく使われます。
唇の塗り方
STEP1
線画で口を描きます。影が入る部分の線は太く描きましょう。
STEP2
唇の周りをベタ塗りします。唇は細かいパーツになりますので、始めに色をおおまかに塗っておき、削るようにして形作ります。
STEP3
ベタで塗った唇の不要な部分を消していくことで、唇の輪郭を出していきます。上唇はしっかり形作り、下唇の方はエアブラシなどで、輪郭をぼかしていきます。
STEP4
口元にかかる影を塗ります。唇の中心に近づくにつれて濃くなるように塗っていきます。
STEP5
唇のぷるんとした質感を表現するために、ハイライトを描き込みます。
STEP6
ハイライトや口の下の影を薄めに入れて完成です。