『まころん画集 ソラノキオク』イラストレーター・風景画家 まころんさんインタビュー「自分自身を癒し、解放する空」

イラストレーター、風景画家として、CDジャケットや映画ポスター、ミュージックビデオ、広告、ラノベの挿絵など幅広く活躍するまころんさん。これまでに描き、SNSで発信してきたオリジナルイラストをメインとし、描きおろしのイラストも収録した初画集『まころん画集 ソラノキオク』が発売中です。

透明感のある美しいイラストは、どのようにして生まれたのか。まころんさんにお話を伺いました。

まころん画集 ソラノキオク

「解放」されたいという気持ちから、空を見上げる絵を描いている

−はじめに、自己紹介をお願いします。

元々はアニメーションの背景美術制作を専門とする会社で働いていました。アニメが好きというより、風景を描きたくて。
絵を描いて生きていける道を探しているときに、その会社を見つけてひたすら背景だけを描き続けてきました。

コロナ禍をきっかけにイラストレーター・風景画家としての活動を始めて、現在はゲームの制作会社で働きながら、創作活動をしています。

−「まころん」というペンネームの由来を教えてください。

実はSNSでの発信を始める際に、ずっと寝かしていたままのアカウントがあって。名前をどうしようか考えていたんです。ケーキ作りも好きで小学生のころの夢のひとつはパティシエだったのですが、皆さんご存知の「マカロン」には、その原型とも言える「マコロン」というお菓子があるんです。それで「まころん」にしました。苗字もあるようなもっとかっこいい名前をつけようかとも考えていたのですが、周りにダサいよって言われてやめました(笑)。

−イラストレーター、画家を目指したきっかけはどのようなものでしたか?

ずっと絵は描き続けているんですが、仕事として描いていて。趣味で描くことはあまりなかったんです。コロナ禍で時間ができたこともあって、似顔絵から絵を描き始めてみたんですが、元々好きだった風景画を描いてSNSに投稿してみたら、とても反響がよかったんですよね。それが2年半くらい前のことです。

ずっと家の中にいる時間が増え、空を見ることがなくなって「解放」されたいという気持ちから、空を見上げて見ている(あおり)絵を描いています。

初の画集を手にページをめくりながら、描いた季節やどんな反響があったかなど、さまざまなお話をしてくださいました。

人物はあくまで絵の要素のひとつ

−絵を描き始めたのはいつごろだったのですか?

父が印刷工場で働いていて、大きな藁半紙をよく持ち帰ってきてくれたんです。裏面がシールになっていて、絵を描いたらシールになるものでしたね。母は保育士で工作するための道具もたくさんあって、母が絵を描く隣で自分も描いていました。

−学生時代も絵の勉強をされていたのですか?

大学では教育美術を専攻していて、絵を描くために入りました。すごく興味のあった教授がいらして、その人に教えてもらいたかったんです。大学院の授業では陶芸などもやりましたね。絵を描くのと同時に、何かを作ることがとても好きでした。

好きな画家はターナー(※編集部注:ロマン主義の風景画家)ですね。僕はリアルな風景を描いていましたが、崩した感じの絵も描くようになりました。ほんとうはもう少し崩したい気持ちもあるのですが、今回の画集に収録した作品はリアルなものがほとんどですね。女の子を描いていてもシルエットにとどめ、見てくださる方が風景に入り込めるようにしたいと思っています。人物はその要素のひとつですね。絵の上手な方はたくさんいらっしゃるので、僕自身の想いや、気持ち的な部分を大切にしているつもりです。

『まころん画集 ソラノキオク』より。青の色彩が印象的な作品が多く掲載されています。

−今回の画集に収録している作品は「空」がテーマとなっていて、季節ごとにさまざまな色がありますが、特に青が印象的です。

青い絵を描こうと思っていたわけではなかったんです。自然と生まれてきたのが青でした。緑の絵を描こうと思って描き始めても、最終的に青になるんです。まころんとして描きながら、青が好きなんだなということに気づきましたね。

思い返してみると、海が好きですし、自然と触れ合うことがとても好きです。ジンベエザメに触れたくて海外まで行ったこともありました。それがクジラのモチーフなどにつながっていると思います。

今後、個展などで販売予定のアイスバーキーホルダー。イラストに限らずモノづくり全てに精力的に携わる姿勢が印象的でした。

とにかく描いてしまってあとから足していく

−SNSでは作品の投稿頻度がとても高いですが、制作のスピードは当初から速かったのですか?

いまはパソコンのスペックなども関連し、少し制作スピードは落ちていますね。仕事では年に何千枚も描く必要がありましたから、速い方なんだと思います。

SNSに投稿はしていましたが、こうして画集にしていただいて世に出すということはまったく考えていなかったので、人に見せられるものなのかという不安はありました。仕事としての絵という目で見ると修正した方がいいところもあるのですが(笑)。

SNSに投稿してきたイラストは、ラフも描かずに青空を乗せて雲を描いてから考えるという描き方なんです。まずは自分のいちばん好きなものがそれだから、最初からそこを描き出します。構図は考えていますが、とにかく描いてしまってあとから足していくというやり方ですね。

−機材などの制作環境を教えてください。

ペンタブレットはWacom Intuos Proを使用しています。アプリケーションはAdobe PhotoshopとCLIP STUDIO PAINT PROを使っていますね。
パソコンの処理速度が追いつかなくなってきているので、そろそろ環境も見直そうかなと考えています。

ワコムのタブレットはまころんさんが実際に絵を描く際に使用しているものです。

絵を描いて自分自身が癒されている

−描くのに苦労したものはありますか?

これがというものは特にないのですが、1年くらい前にSNSでとても反響のあった作品を超えたいと思って描いていても、なかなか当時の自分を超えられないというところがありますね。

基本的に青が好きで、仕事で背景を描いてきたので、なんでも描くことはできるのですが、緑は難しかったですね。山のなかの川、滝など緑ばかり描いていましたが、まころんとして描く絵は結局青が多くなります。

−イラストを描く練習方法はありますか?

特に練習するということはなくて、ひたすらにSNSに発信するために描き続けて、結果としてそれが練習になっているんじゃないかと思います。Twitterでいえば、2日に一度はアップしてきて、2-3年で300-400くらいは描いてきました。

実際に、皆さんからの反応がとてもよく、アップしたいなという気持ちが強くて、さらに世界猫の日、海の日なんていう記念日に合わせて投稿したいと思うと、次の日にもアップする形になったりもしました。

練習というより、自分のモチベーションですね。皆さんにまた見てほしいという思いで描いているうちに上手くなったと思います。

あまり客観的に考えたことはなかったのですが、絵を描いて自分自身が癒されているんだと思います。逆に言うと自分を癒すために描いていて、いい絵にする、いい構図にするということよりも「きれいな青だな」と思いながら描いているんです。そういうふうに描いた絵を、偶然SNSで見て好きになってくださる方々、見てくださる方々のおかげで本も出せて、個展やグッズの制作につながっていったという感じですね。

▼まころんさん愛用のカードケース

本来であれば、製品には使用されないキズやしみなどのある革を再利用的に使用し、美しいブルーに染められたカードケース。このタイプのカードケースにまころんさんのイラストがプリントされたアイテムも近日発売を予定とのこと。

誰かの前向きに生きるきっかけになれたのが嬉しかった

−現在、銀座にて個展が開催中、8月の初旬にはTSUTAYA BOOKSTORE下北沢での展示もありましたが、SNSとリアルの場での反響の違いは感じられましたか?

やっぱり直接話ができるっていうのはすごく大きいなと思いましたね。見に来てくださった方が、絵がよかったっていうことだけじゃなく、この絵でつらい時期を乗り越えられましたというお話しを聞いたときにはすごくモチベーションになりましたし、誰かの前向きに生きるきっかけになれたのはとても嬉しかったです。

今回の画集ではコラボレーション作品を収録していて、ユーザーさんとも一緒にできたらいいなという思いと、SNSがきっかけで生まれたものなので、タイトルやキャラクターは何がいいかなどSNS上で聞いたりもしました。

熱意のある方がたくさん来てくださって、なかには一時間くらい話し込んだ方もいらっしゃいました。受験勉強中の学生さんなど、若い方々にたくさん来ていただいて、SNSとはまた違ったフィジカルな反応があってとてもよかったです。

2023年8月4日から14日まで、TSUTAYA BOOKSTORE下北沢にて開催された、まころん初画集『ソラノキオク』発売記念イラスト展。
TSUTAYA BOOKSTORE下北沢ではサイン入りの画集の販売も行われました。

−今回の作品集を皆さんにどんなふうに見てほしいですか?

SNSには2-3日に一度は投稿してきて、フォロワーの皆さんと四季をともにしてきたという意識があるので、その季節を一緒に振り返ってみてもらえたら嬉しいですね。作品のなかには季節の花も入れたりして、季節を感じられるようになっていると思います。

そして、フォロワーの皆さんがそれぞれに思い入れのある作品について自由に語っていただけたらと思います。

−まころんさんが、今後チャレンジしたいこと、やってみたいお仕事などありましたらぜひ教えてください。

水族館で個展をやらせていただくお話しがあるんです。1年くらい前から水族館で何かイベントをやってみたいと思っていて、絵じゃなくてもよかったんですが、来年以降、水族館でプロジェクションマッピングなど、何か面白いことができたらと思っています。

(写真・文:笠井里香)

<個展情報>

風景画家 まころん展 『海の彼方へ Aqua Celestia』
■会期 2023年8月16日(水) 〜 2023年8月29日(火)
■会期中の営業時間 11:00〜14:00 / 15:00〜19:00
(平日14:00〜15:00はクローズ)
■まころん在廊日
8月19日(土)11時~16時 (ライブドローイング2h)
8月26日(土)13時〜16時 (ライブドローイング2h)
8月29日(火)15時〜
■場所 yuhaku Ginza Gallery
東京都中央区銀座3丁目10番7号 銀座京屋ビル1階
https://yuhaku.co.jp/article/10119/

●スペシャルコラボコンテンツ
コラボグッズや限定商品、プレゼント企画もあり!

<プロフィール>


まころん(マコロン)
イラストレーター、風景画家。
映画ポスター、ジャケット、MV、風景画、広告、ラノベの挿絵などで活躍中。近著は初の画集となる『まころん画集 ソラノキオク』(玄光社)。


<玄光社の本>

まころん画集 ソラノキオク

 

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