ポートレートは専門の写真家がいるほど確立されたジャンルです。カメラを持った人なら一度は撮ってみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。
ただ、ポートレート撮影には「モデル」の存在が必須。モデルさんのスケジュールや撮影場所を決めるなど、撮影を始めるまでに多くの段取りが存在します。
そこをヒラリと乗り越えたのが、女性セルフポートレート写真家のRinatyさん。初の著書「#セルフポートレートの裏側 撮影もモデルも全部わたし。」は、自身をモデルとして撮影するセルフポートレートの撮り方、そして撮影の裏側を公開した一冊です。セルフポートレートは、自分がモデルで自分がフォトグラファー。誰もがチャレンジできるジャンルです。
コンセプトは「わたしだけの世界観で、そこに写ったわたしなら好きになれる」。
自分の新たな一面を発見でき、自分のことをもっと好きになれるセルフポートレート作品50点の中から、8点の作品を紹介。第7回は木々や草を演出に利用したセルフポートレートです。
シルエットで魅せる日本の美
富士山のシルエットを強調
私は大阪と東京間を夜行バスでしか移動したことがなく、生の富士山を見たことがありませんでした。ある時、紅葉と富士山の組み合わせで撮影してみたいと思い、山梨県を訪問。昼間にロケハンで富士山を見た時、シルエットの美しさが強く印象に残りました。そこで富士山のシルエットを強調させる作品にしたいと思い、日没直後を狙って撮影を行いました。
Point 1 シルエットが浮き立つ露出に調整
富士山のシルエットが見えるようシャッタースピードを落とし、絞りも開放気味に設定しました。そして頭上のもみじをライトアップさせるため、ストロボ1灯を上向きにセッティング。そこから漏れた光を利用して傘を光らせ、人物のシルエットを写し込みました。
Point 2 落ち葉を投げて動きを出す
写真に動きを入れるために、落ちていたもみじの葉を集めて、シャッターが切れるタイミングで真上に投げました。傘に葉が被らないよう高めに投げて、もみじに手を伸ばすイメージでポージングしました。
Point 3 空の色が変化するため短時間勝負
日没時は、空の色や明るさの変化が早いため、美しいシルエットで撮影できる時間が限られます。短時間で成功させられるように急ぎながら撮影。3分に一度はカメラの露出を合わせ直しました。
【撮影の裏側エピソード】投げ落ちる葉の位置に苦戦
葉を理想の位置に投げ飛ばすのはとても難易度が高く、苦戦しました。投げ飛ばす量を増やすと美しくなく、減らすと何が写っているのかわからない状態になります。人物のシルエット、指先、葉、そして富士山が完璧に撮れた瞬間の達成感は忘れられません。