和風ファンタジーの世界観は、アニメやゲームなどで人気のある類型の一つです。わたしたちが歴史の中で垣間見る過去の日本とは似て非なる日常生活の様相には、その世界でこれから繰り広げられる物語への期待を掻き立てる魅力があります。
「和の幻想世界の描き方」では、イラストレーター七原しえさんが、イラストの背景にある設定のほかアイデアを発想するコツ、イラストに仕上げるまでの制作手順を詳細に解説。世界観の設定からイラストレーションを起こす技術を身につけられる一冊となっています。
本記事では序章「作品ギャラリー&独自解説」より、「桜」をテーマにしたイラストの例を紹介します。
>この連載の他の記事はこちら
花あかり
春の満開の桜の下、年に一度の歓びの舞い
七原しえ’s comment
画面全体に衣装や花が広がったイラストです。リボンや花弁・長い袖で人物が回転している時の動きや空気感・空間の広がりを表現しました。また、多くの春モチーフを装飾として取り入れています。
傘のフチからしだれ桜をイメージした装飾紐、傘の柄(え)には桜の柄(がら)入り提灯、提灯の明かりに群がる蝶の群れ、帯留めの瓔珞風アクセサリーには桜のパーツを入れています。袖の桜と枝は袖から半透明に生えているような幻想的なデザインにしました。他にも色々な春要素を組み込んでいるので、是非探して見て下さい。
世界観・こだわりポイント
毎年春の時期、春風と桜前線とともにやってくる佐保姫。花で飾られた傘と花で彩られた長い袖をたなびかせて水辺に舞うと辺りの桜が一斉に芽吹きはじめ、そしてあたり一面に満開の花が咲きこぼれます。人の目には映らない姿ですが、運が良ければ暖かな春の夜、花吹雪と一緒にくるくると舞うその姿が水面に映るのが見えるかもしれません。
雪の深い北国に住んでいるため長い冬が終わってようやく春が来たお祝いとして、桜に関するイラストを毎年かならず1枚描いています。桜は和風イラストに欠かせない大切な題材の一つです。地元に桜で有名な名所があるため、その場所を毎年訪れてその年のイラストの参考にしています。