創作において物語を動かし、表現するキャラクターには、しばしば世界観や物語を象徴するデザインが適用されます。そこには本人の性格や服装、持ち物だけでなく、時にはキャラクター自身の「種族」も含まれており、動物などをモチーフにしたキャラクター造形も珍しいものではありません。
「獣人・擬人化 人外デザインのコツ」では、動物をベースとしたキャラクター造形の方法論とともに、キャラクターの作例を解説。擬人化の際に重要な特徴の捉え方やデフォルメの度合い、動き表現の「人らしさ」「動物らしさ」の出し方など、実際に物語の中でキャラクターを動かす上で把握しておくべきポイントを詳しく知ることができます。
著者は漫画作品「人馬」やゲーム「モンスターハンター」シリーズの3Dモデリング、キャラクターデザインなどに携わっている墨佳遼さん。
本記事では第四章「節足動物の擬人化」より、節足動物をキャラクター化するにあたり気をつけるべきポイントを解説します。
節足動物をキャラクター化する
墨佳が最も得意とする、苦手な人が多い存在のキャラクター化。魅力を抽出するにはまずどんな考え方から始めるのか、受け入れられるか否かは何で決まるのかなど、試行錯誤から見つけ出した工夫です。
白い身体は白い体液から。色白は人間キャラだとクールな印象になりますね。堂々とした立ち姿は、頭巾で頭部を覆っても周囲が見えることを示します。
嫌われ者をかっこよく描く
かっこよくするためにはまず、気持ち悪いという認識を変えることが必要です。そこで重要なのが、「ここがすごい」とか「ここがかっこいい」というポイントを抜き出す作業。そこから紐づけられる魅力も見えてきます。例えば、ゴキブリは三億年の歴史を持つ最も身近な生きた化石のひとつ。
- 最高時速300km/hで走る
- 視覚に頼らず空気の流れで空間を立体的に捉える
- わずかな光を探知しあえて影の中を進む
こんな面白い生態もあるという魅力を伝えるため、忍者の
要素と組み合わせてみました。
最初はこんなデザインでした。「かっこいいけどGにしか見えない」と多くの人に言われ、「その通りだ」と思いました。長い触覚がそれらしく見せてしまうんでしょうね。そこで、ゴキブリのふわふわした柔らかい羽のボリュームを触角に置き換え、全体のシルエットをファッションに落とし込むことで、嫌悪感の削減を図りました。どのポイントを押さえれば「ずらせる」のか、または「そのまま」なのか。このシビアな判断ポイントは細部にあるのです。
擬人化したことのメリット
苦手な人はシルエットだけでもうダメ。殺虫スプレーの缶に絵が描いてあるから持てないという人だっています。でも擬人化すれば、苦手な人にもその生態を面白く、かっこよく伝えることができます。以前「ゴキブリはなぜ殺虫スプレーにあえて向かってくるのか」という漫画を描いたら、現物を直視することすらできない人々から「対策が取れてうれしい」という反応をもらえました。不思議とうれしかった経験です。
ゴキブリとカマキリは近縁