「これ、どうやって撮ったの?」プロのアイデアと技術が凝縮された広告写真の世界

日頃、私たちが目にする広告写真。時には非現実的な雰囲気をまとい「これ、どうやって撮ったんだろう?」と思わせる作品を目にすることもあるでしょう。

コマーシャル・フォト2020年12月号の特集「あの写真はどう撮られたのか? ~広告写真の舞台裏~」では、どのように撮られたのか気になる写真をピックアップ。表現意図やアイデア、機材配置などの解説を通して、広告写真に携わる人々の積み上げた、様々な技術を垣間見ることができます。

本記事では、特集PART3「5人の『卵』撮影表現」より、高井哲朗さんの撮影技法を紹介します。

高井哲朗「ゼウス・ボール」

ブラックライトとフィルターの光で色を描く
「アヴァンギャルド」、「スキャンダラス」。撮影のキーワードとして浮かんだ言葉たち。自然に囲まれて育ち、小説を読むことで現実から離れ、全く違う世界に飛んでいけることを知った。大阪万博で見た実験映像に衝撃を受けた写真学生時代には、光で描かれた色によって、現実からポンッと異世界に飛んでいけるような衝撃を覚えた。今回の作品はそんな体験を元に、暗闇の中から飛び立ち、ときには波に漂うこともできる飛行船をイメージしている。

卵は水に入れて浮遊感を出し、カメラをブラして撮ることでゆらぎを作る。フィルター越しの光を当て、色を作っていく。色には敢えてグラデーションをかけず平面的な絵を狙う。それは絵を描く感覚に近いかもしれない。さらに2次元の平面の中に、何分の1秒かのストロボ光で時間軸を入れ込んだ。

使用機材 カメラ:キヤノン EOS 5D Mark II レンズ:SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG
左はセット後方部分。右は自作したレインボーフィルター。

水槽下と後ろに乳白アクリルを設置。下には赤色フィルターを、後ろからはブルーフィルターを透過させてそれぞれ照射。水槽上と右横からブラックライトを当てる。さらに正面左斜めからレインボーフィルターを透過させた光を入れた。

 

たかい・てつろう
1951年生まれ。1986年高井写真研究所設立。受賞歴にクリオ賞受賞、日本広告写真家協会 APA賞受賞などがある。東京写真研究倶楽部 所長。
www.kenkyujo.co.jp


コマーシャル・フォト2020年12月号

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