デジタル作画においては、陰影を先に描き、後から色を乗せていく「グリザイユ画法」という手法があります。立体感や線画の処理、レイヤー枚数削減などの面でメリットがある一方、色がくすみやすいという特徴のある描き方です。
「グリザイユ画法&エフェクト 完全マスターブック」は、CLIP STUDIOを用いたグリザイユ画法のノウハウを伝えるイラスト技法書。作画に不可欠な陰影表現のコツや、実際の作画手順、主線のある線画と組み合わせた応用的な作画方法、調整レイヤーとエフェクトを駆使したイラスト表現にいたるまで、様々なテクニックを豊富な作例で解説します。
本記事では、第1章「グリザイユ画法とは」より、グリザイユ画法の概要と、一般的なデジタル作画との違いについての記述を抜粋してご紹介します。
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グリザイユ画法とは
イラストの彩色方法は色々なものがありますが、大まかに分けると、 「アニメ塗り」、「水彩塗り」「厚塗り」の3パターンに大別されます。「グリザイユ画法」は、このうち3番目の「厚塗り」に使用されることが多い技法です。
厚塗りは油彩やアクリル画のような塗り重ねをデジタルで模した塗り方で、一般に主線がなく、立体感や重厚感があるためリアル系などとも呼ばれています。海外のファンタジーイラストなどでは一番多く使われている塗り方です。
グリザイユ画法使用例
精緻な描き込みがなされている厚塗りは、「アニメ塗り」や「水彩塗り」といった彩色方法に比べて、作成により多くの時間がかかるとされています。
グリザイユ画法は、時間のかかる「厚塗り」を比較的短時間で完成させることができる簡易的な技法と言えます。
元々は油彩の下描きのための技法で、下塗りの段階で無彩色のグレー諧調で陰影を塗り分けておき、「乗算」や「オーバーレイ」などの合成モードで彩色されたレイヤーを重ねることで着色していきます。
従来の彩色方法とグリザイユ画法の違い
従来の彩色方法はまず線画を作成し、線画の下に追加したレイヤーに対してベースとなる色を塗っていき、さらに影色を描き足していく、という工程を経て作品を完成させます。「グリザイユ画法」では、最初にモノクロのグレー諧調で陰影を描き上げ、その後色を乗せていきます。
つまり、従来の彩色方法とは逆に進めていくことになります。
通常の彩色工程
線画→ベースカラー着色→影付け
グリザイユ画法の場合
線画→陰影・影付け→着色
グリザイユ画法の大まかなワークフロー
通常の彩色工程
グレーで大まかなシルエットを描く。
影色のみでディテールを描き加えていく。
光源の位置を意識しながら、光の当たる箇所を明るい色で塗り重ねて立体感を出していく。
ディテールや陰影を仕上げる。
彩色工程
下地となる色を合成モードで重ねて彩色していく。
発色を見ながら[乗算]、[スクリーン]、[オーバーレイ]など合成モードを変えて塗り足していく。
エフェクトを描き足す。
調整レイヤーでグリザイユ独特のくすみを解消する。
<玄光社の本>