デジタル作画においては、陰影を先に描き、後から色を乗せていく「グリザイユ画法」という手法があります。立体感や線画の処理、レイヤー枚数削減などの面でメリットがある一方、色がくすみやすいという特徴のある描き方です。
「グリザイユ画法&エフェクト 完全マスターブック」は、CLIP STUDIOを用いたグリザイユ画法のノウハウを伝えるイラスト技法書。作画に不可欠な陰影表現のコツや、実際の作画手順、主線のある線画と組み合わせた応用的な作画方法、調整レイヤーとエフェクトを駆使したイラスト表現にいたるまで、様々なテクニックを豊富な作例で解説します。
本記事では、第1章「グリザイユ画法とは」より、グリザイユ画法を使うメリット/デメリットについてご紹介します。
グリザイユ画法のメリット
立体感を出しやすい
グレーの諧調で陰影を描いていくので、立体感を出しやすいです。
線画をクリンナップする必要がない
下絵を塗り重ねて仕上げていくので線画をクリンナップする必要はありません。
行き当たりばったりに描き重ねて、アドリブを盛り込むことも可能です。
影色を考えなくてよい
モノクロ下絵の陰影が適正に描かれていれば、上に重ねたレイヤーに単色をベタ塗りするだけで、影色が自動的に生成されていきます。
色塗りの工程がシンプルなため、レイヤー枚数が少なくて済む
影色用のレイヤーが必要なくなるので、それだけでも大幅にレイヤー数を減らすことになります。
使用される色数が多くなればなるほどレイヤー数の差は大きく開いていきます。
バリエーションが作りやすい
通常の彩色方法だと、特定の箇所の色を変えるには、影色を含め対応するレイヤーすべてに対して修正を施す必要がありますが、グリザイユの場合は上に乗せるレイヤーの色を1枚塗り替えるだけです。
グリザイユ画法のデメリット
下絵の作成に時間がかかる
彩色が楽な分、グレー諧調による下絵の作成に時間がかかるきらいがあります。
適正な陰影を描くには明暗で形をとらえるデッサン力がある程度必要となります。
簡易なイラストや、ライトな作風には向かない
色数が少なく、アニメ塗りのような陰影のないタイプのイラストの場合、無理にグリザイユで描くより従来の方法で彩色したほうが簡単です。
色がくすみやすい
明度差のみで陰影を付けるので、影色に色温度による変化が生じません。そのため、肌などの影色にどうしてもグリザイユ独特の色のくすみが発生してしまいます。
くすみを解消するには調整レイヤーを追加して、彩度を高めてやる必要があります。
<玄光社の本>