星雲や惑星、夜空を埋め尽くす星空には、見る人の心を揺さぶるものがあります。誰しも一度は、星空を写真に記録したい、と考えるのではないでしょうか。
星空と地上風景の両方を構図に入れた写真は、一般的に星景写真と呼ばれます。主役はあくまでも星空ですが、地上の自然や建造物を写し込むことで、星空の魅力が引き立つことから、天体写真の中でも人気のあるジャンルです。
技術評論社が発売している「星空撮影の教科書」では、星空写真にまつわる様々なテーマを、著者で天体写真家の中西昭雄さんによる作例とともに解説。星空を撮影するにあたって必要となる機材から天球の動き、撮影に適した時間帯、場所の選び方、合成処理を前提とした撮影方法、海外遠征時の留意点にいたるまで、星空撮影の初心者からベテランまで、幅広いレベルの撮影者に役立つ一冊となっています。
本記事では、Chapter2「星空撮影にチャレンジしよう」より、構図決めのコツについて一部を抜粋してご紹介します。
水平・垂直を取る
構図合わせと併せて行うのが、水平出しです。地上の景色を入れた星空写真を撮る場合には、一般の風景写真とじように、きっちりと水平を出して撮影します。構図をほぼ合わせた状態で、水準器を使って画面の横・縦と水平・垂直が合うように、微調整を行います。最近のカメラなら電子水準器が内蔵されていますが、あえて外付けの水準器を使ってもよでしょう。
例外となるのは、撮影地が傾斜地で、水平を出すとかえって構図が傾いて見えてしまう場合です。このような場合は、カメラが傾いていても自然に感じる構図の方がよいでしょう。撮った後に、もし違和感を覚えたら後処理で傾きを補正します。
水準器を使って水平を出す
水平を出すには、カメラに内蔵されている電子水準器を使うのが一番簡単です。しかしカメラによっては、1度程度の狂いが生じることもあります。わずか1度でも、けっこう傾きがわかってしまうものです。その場合は、昔ながらの、オイルの中に気泡が入っている外付けの水準器を使うのも悪くありません。水平出しに関しても、雲台は3WAYタイプが使いやすいでしょう。
水平が出ていないと構図が安定せず、見ていて違和感を感じます(上)。水平線や地平線が写っている写真では特にそう感じるでしょう。しかし傾斜地での撮影では、この基本を多少崩した方がよい場合もあります。きっちり水平をとると、逆に傾いて見えてしまうといったケースです。そんな場合には少し構図を傾けて、自然な構図に見えるように調整してみましょう。
成功する構図のポイントを知ろう
地上の景色を入れた「星空写真」では、構図を決めるためのポイントは一般的な風景写真と同じです。よい景色を選んで、よい構図に収まるようにレンズを選び、構図を決めればOKです。しかし、主役が星空であることを考えると、通常の風景写真とは異なるポイントがあります。ここでは星空写真ならではの構図のポイントについて解説を行います。
一方、地上の景色の入らない「星座写真」や、天体望遠鏡を使った「天体写真」では、被写体を真ん中に置いた「日の丸構図」が基本となります。こと構図に関しては、考え方が楽になるでしょう。むしろ、暗くて被写体が見えにくい状況で、うまく思い通りの構図にできるかどうかのテクニックの方が重要になってきます。
夜空を多目に捉える
一般の風景写真では、意図して「雲」や「青空」「夕焼け」を活かそうとしない限り、地上の景色が主体となります。しかし「星空写真」では「星空」が主役ですから、昼間の風景写真の感覚に比べて、画面内に占める空の部分を多くとるようにします。そのためには、いったん昼間の風景写真のつもりで構図を決めた上で、少しカメラを上空に向けるとよいでしょう。おおよそ、地上の景色に対して空の割合が3/4 前後になると、程よい感じになります。もちろん景色によって、あるいは写したい星空によっては、この限りではありません。
またレンズの画角によっても、構図は多少変わってきます。超広角レンズや魚眼レンズでは、星空の占める割合を多めに、反対に標準レンズや中望遠レンズでは星空の占める割合を少なめにした方がよいことが多いです。
昼間の一般の風景写真と比べた場合、星空写真では夜空の星が主役になりますから、星空の部分が占める割合を多くとるようにします。地上の景色にもよりますが、空の割合として3/4前後を目安にしましょう。
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