カッコいいスナップ写真の撮り方
第1回

自分の感性を信じて、人とは違う視点を持とう

今や誰もがカメラを手にして、日々の記録を写真として残す時代になりました。スナップ写真と呼ばれるジャンルは、目の前の景色、日常を残すという意味では、私たちが最も親しんでいるジャンルかもしれません。

カッコいいスナップ写真の撮り方」では、日頃私たちが撮っているスナップ写真をよりカッコいい作品へと高めていくための秘訣を伝授。著者の野寺治孝さんによれば、「カッコいいスナップ写真」とは「独自の視点」「写真的感性」「空気感の表現」「個性的に撮る」という4つのポイントを押さえた写真としています。自分なりの工夫や視点を持ち、機材やテクニックに頼らず、それでいて場の空気をしっかり捉えることであり、本書ではそれを実践するための考え方について、様々な作例を使って説明します。

「早い話、 好きなものを自分らしく撮ってくださいということなのです。(中略)カメラを持って外に出て、何でもいいですから感性の赴くままに撮ってみてください。 そのことが “カッコいいスナップ写真” につながっていくと思います」(INTRODUCTION「カッコいいスナップ写真とは。」より引用)

本記事では「カッコいいスナップ写真の解説」より、「独自の視点」についての解説を紹介します。

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カッコいいスナップ写真の撮り方

1. 独自の視点(アングルポジションの工夫と個性的な発想)

DATA
富山県・上市町・実家の田/午前7時頃
フルサイズ・デジタル一眼レフカメラ
24-105mmF4(105mm付近)
1/1250秒|F5.6|絞り優先AE|-2/3補正|ISO200

撮り方&仕上げ方
ピントは前後ボケが撮れる適当な距離の稲穂に合わせる。絞りは前後ボケがきれいになる値にする。この作品は開放値に近いF5.6だったが、焦点距離によっても変わってくるので臨機応変に対応する。背景は建物の陰などを利用してシンプルにする。レタッチではコントラストをやや強める。

NOTE
夏には富山の妻の実家に帰省する。ここでも通常の旅と同じで早朝の撮影は必須だ。この日は朝方まで降っていた雨のおかげで、稲穂がキラキラと輝いていた。もっと広い画角で撮ることも考えたが、背景に近代的な建物が入ってしまうので、中望遠の画角で前後ボケを活かした絵作りをした。雨粒が玉ボケになりきれいに写ってくれた。

 

独自の視点を具体的に説明しますと、“他者とは違ったアングルとポジションで被写体を視る”となります。 例えば富士山の撮影会に参加をしたとします。 湖畔越しにほとんどの撮影者は三脚を立てて富士山を撮っています。そのような時に後ろに下がって、しゃがんでローアングルから大勢の撮影者越しに富士山を撮る、という行為です。

もっと極端な例では、ピントは人物の後ろ姿に合わせて、富士山はボケている、でもいいのです。さらに富士山に背を向けて人物を撮ってもかまいません。

「せっかく富士山を撮りに来たのにありえない」 と思った方もいらっしゃることでしょう。 もちろん撮ってもかまいません。しかし、ここで大切なことは “何をどのように撮っても自由”ということなのです。富士山は単なるモチーフなのです。もしテーマが「美しい富士山」ならば富士山を撮りましょう。しかしテーマが 「秋」ならば秋を表現すればいいのですから、秋を感じるすベての被写体がモチーフになってきます。足元に落ちている紅葉した葉も、湖畔のススキを撮っても一向に問題ありません。

このことは例え外国に行こうとも同じなのです。 パリで凱旋門を、ニューヨークで自由の女神を撮らずともその場所を表現することは可能です。 例えば、劇映画やテレビドラマなどで主人公が東京から大阪に行ったとします。この場面転換カットで、 誰もが知っている通天閣や大阪城のシーンでは説明しすぎだと思いませんか。たんに分かりやすいだけで、独自の視点ではありません。 私なら、たこ焼きを焼く手先とか、阪神タイガースの帽子をかぶった子供とかを写します。

要するに自分の視点で視た大阪はどのようなシーンかということで個性が写ってきます。理想は被写体が何であれ、 普段撮り慣れている場所と同じように撮れる、ということです。

「せっかく大阪に来たのだから、誰にでもわかる景色を撮る」ではなく「大阪はモチーフのひとつ。誰も見つけられないような視点で撮ろう」が自分独自の視点ということです。 普段通りに地に足を付けて落ち着いて冷静に撮れるということが大切なのです。


カッコいいスナップ写真の撮り方

著者プロフィール

野寺治孝

1958年千葉県浦安市生まれ。写真家。海や日常風景の周りに漂う空気感や自然光を活かした撮影に定評があり多くのファンを持つ。主な仕事に松任谷由実のコンサートパンフレットとCD ジャケット、丸の内カレンダー(三菱地所・伊東屋)、サマーグリーティング切手2015 、2016年(日本郵便)などの撮影を手掛ける。その他雑誌、写真展、講演、写真集など多数。
ウェブサイト:http://www.nodera.jp/

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